大腿四頭筋の解剖学と大腿四頭筋を肥大させるトレーニング種目を解説。

はじめに

この記事では大腿四頭筋の解剖学とトレーニングについて解説する。

大腿四頭筋は特に男性が見た目を期にする場合やボディビルに置いて非常に重要な部位である。なぜなら下半身のアウトラインに及ぼす影響が他の筋肉よりも大きいからだ。

例えば外側広筋はフロントとサイド、バックどこから見ても下半身のアウトラインに寄与する。ここが鍛えられることでXフレームが大きく美しくなる。大腿二頭筋長頭や大殿筋もアウトラインに寄与するが、それはサイドから見た時に限られる。

大腿直筋はボディビルに置いて、脚前のセパレーションとカットを司る骨格筋である。ここがしっかり鍛えられている人とそうでない人では、脚の完成度に雲泥の差が生まれる。また上腕筋と上腕二頭筋のように、大腿直筋の肥大が外側広筋を外側に押し出す作用も考えられるので、外側広筋の発達が乏しい人にとってはアウトラインとして寄与する可能性もある。

以上のことから大腿四頭筋は重要な部位である。

大腿四頭筋は脛骨を前に出すという機能を持ち、これは他の筋肉と比較してシンプルである。そしてこの機能にダイレクトに刺激を入れることができ、どのジムにも設置されているマシンがレッグエクステンションである。

以上のことから、筆者は大腿四頭筋の筋肥大に限定するなら、レッグエクステンションが最も高い再現性をもっと考えている。

今回は大腿四頭筋の解剖学と、大腿四頭筋の筋肥大に特化したレッグエクステンションのやり方を解説する。この記事は大腿四頭筋の筋肥大のみを目的にしているので、競技力向上やスクワットの重量を伸ばしたいといった筋肥大以外の目的をもってトレーニングをする人には一切役に立たない記事になる。

まず大腿四頭筋の解剖学と構造について解説する。次に大腿四頭筋を鍛える代表的な種目を比較する。さらにレッグエクステンションの基本的事項を解説した後にレッグエクステンションでの大腿四頭筋鍛え分けとレッグエクステンションの持つリスクを解説する。

大腿四頭筋の解剖学

ネッター解剖学アトラス原著第4番を基に筆者作成。

大腿四頭筋はその名の通り4つの筋肉から構成される骨格筋群である。

外側広筋

外側広筋は最も外側に位置する骨格筋で、大腿骨転子間溝、大転子の前下方縁、殿筋粗面、大腿骨粗線の上部1/2、外側筋間中隔全域に起始を持ち、膝蓋骨の上縁外側、膝蓋靭帯を経て脛骨粗面に停止する。

詳しい起始停止を覚える必要はなく、外側広筋は大腿骨の大転子の少し下から外側を通って脛骨の少し外側に停止していると思ってもらってよい。

外側広筋の基本的な機能は膝関節伸展で、大腿神経に神経支配されている。

外側広筋の持つ特徴は最も外側に位置するということで、これは脚のアウトラインを構成することを意味する。ここが鍛えられるとウエストと下半身のギャップが広がり、下半身と上半身が作り出すXが美しくなる。

https://ronnicoleman.com/ronnie-coleman-age-weight-and-height/より筆者編集。

ボディビルディングで外側広筋は全てのポーズでアウトラインを構成する筋肉であるから、優先して鍛える部位である。

外側広筋を鍛えることはウエストとの差を大きくすることに繋がり、相対的にウエストが細く見えるという効果がある。そのためくびれをつくりたい人にとっても重要な部位である。

中間広筋

中間広筋は大腿四頭筋の真ん中に位置する骨格筋で、深層に位置するので目で確認することはできない。中間広筋は大腿骨前面の上部2/3に起始を持ち、膝蓋骨の上縁中央、膝蓋靭帯を経て脛骨粗面に停止する。

中間広筋の機能は膝関節伸展で大腿神経に神経支配される。

中間広筋は大腿四頭筋の真ん中に位置するので動作に関与しやすく、かつ深層に存在する。中間広筋は膝関節伸展動作をしていると刺激されるので、狙って鍛えている人はほとんどいないし、狙って鍛えなくて他の広筋群と一緒に肥大する筋肉である。

内側広筋

内側広筋は大腿四頭筋の内側に位置する骨格筋で、その形状が涙に見えることから別名「Teardrop muscle」とも呼ばれる。内側広筋は大腿骨粗面の全長と、内側顆の稜線に起始を持ち、膝蓋骨の上縁内側、膝蓋靭帯を経て脛骨粗面に停止する。

内側広筋の機能は膝関節の伸展で、大腿神経に神経支配される。

内側広筋は膝蓋骨の上縁内側に付着しており、その遠位部から付着部に向かう筋繊維の走行が斜めであることが膝蓋骨の安定性の確保の役割を担っている。

内側広筋の遠位部の筋繊維は、膝蓋骨に向かって極端に斜めに走行していることから内側広筋斜繊維(VMO)とも呼ばれる。この筋繊維は膝関節伸展最後の10度~20度の付近で活性化するといわれており、このことは膝関節を最大収縮させれば内側広筋が使われることを意味している。

ネッター解剖学アトラス原著第4番を基に筆者作成。

大腿直筋

大腿四頭筋を構成する骨格筋の内、ここまでで述べた3つは全て大腿骨に起始を持ち膝蓋骨及び脛骨に停止する単関節筋であった。一方で大腿直筋は二関節筋である。大腿四頭筋は機能の違いから単関節筋である広筋群と大腿直筋に分けることができる。

大腿直筋は中間広筋の上に位置する骨格筋である。大腿直筋は腸骨の下前腸骨稜に起始を持ち、膝蓋骨の上縁、膝蓋靭帯を通して脛骨粗面に停止する。

大腿直筋は股関節をまたいでいる二関節筋であるため、膝関節伸展だけでなく股関節屈曲の機能も持つ。

大腿直筋は大腿四頭筋のセパレーションを出すうえで重要になる。そして大腿直筋は二関節筋という特徴から通常のスクワットやプレス系種目では狙いにくい部位となる。脚は大きいのだが、コンテストで脚がぼやけて見える選手の多くはこの大腿直筋が弱い傾向にある。

大腿四頭筋を鍛える種目

ここでは大腿四頭筋を鍛える代表的な種目の解説をする。

レッグエクステンションとスクワット

大腿四頭筋を鍛える種目としてスクワットが代表的である。スクワットは脚全体を太くする種目としては有効であるが、大腿四頭筋の筋肥大に目的を限定するならスクワットよりもレッグエクステンションの方が効果的と考えられる。

なぜなら大腿四頭筋の基本的動作は膝関節の伸展、換言すると脛を前に持っていく動作であるからだ、この動作にダイレクトに負荷を発生させている種目はレッグエクステンションである。

https://www.optimumep.com.au/blog/the-best-4-exercises-for-knee-osteoarthritisより引用。

スクワットで大腿四頭筋が使われる局面はトップからパラレルまでで、それ以降はハイバースクワットの場合は内転筋群と大殿筋、ローバースクワットの場合はハムストリングスが使われる。

スクワットで大腿四頭筋が活動する範囲はレッグエクステンションよりも少なく、スクワットはこの範囲の狭さを重量で補っているが、筋肥大では仕事量を増やすことが重要で、ケガ無く筋肥大するうえでは稼働域を利用して仕事量を増やすほうが良く、大腿四頭筋への刺激に限定するならばレッグエクステンションに優位性がある。

以上のことから、大腿四頭筋の筋肥大に目的を限定するならスクワットよりもレッグエクステンションの方が効果的である。

スクワットに関してはこちらの記事で解説しているので参照してほしい。

シシ―スクワット(ハックシシ―スクワット)

大腿四頭筋にダイレクトに負荷を与えるためには膝関節伸展に負荷を与えることが重要で、レッグエクステンションが条件を高い水準で見たいしている。レッグエクステンションと同様に大腿四頭筋刺激の条件を満たしている種目としてシシ―スクワット(ハックシシ―スクワット)がある。

https://fitnessvolt.com/tom-platz-leg-workout/より引用。トムプラッツのハックシシ―スクワット。動作中に股関節の屈曲が抑えられており、膝関節伸展で動作が行われている。

シシ―スクワットとレッグエクステンションは股関節の伸展具合と最大負荷の発生する位置が異なるが、動作としてはほぼ同じである。

https://boneandspine.com/knee-range-of-motion/を基に筆者編集。

青色の範囲がレッグエクステンションで負荷の発生するおおよその範囲で、赤色の範囲がシシ―スクワット、ハックシシ―スクワットで負荷の発生する範囲である。

ハックシシ―スクワットと同じような負荷を発生させる方法としてはフリーでのシシ―スクワットや、背もたれの無いタイプのレッグエクステンションに寝そべって行うレッグエクステンションやシシ―スクワットマシンなどがある。これらは効果的なのだが、マシンを置いているジムは少なくメイン種目にするには環境が大きく関係する。

https://www.ironcompany.com/leg-extension-prone-leg-curl-bench?srsltid=AfmBOor0VwPzEAzdkFJ1uXaYmf0lzp3H8o2C9vnSiCyFNEWr4-ITxTYJ及びhttps://reawell.jp/tanren/より引用。

左がタフスタックのレッグエクステンション&カールマシン。右が鍛錬のシシ―スクワットマシンである。筆者はどちらのマシンもジムに設置されているところを見たことがない。

先に挙げたマシンを利用できるヒトは採用すると良い。ただレッグエクステンションの方がほぼすべてのジムに設置されているという点で再現性が高いため、ここからはレッグエクステンションについて解説していく。

レッグエクステンションの基本

大腿直筋を狙いやすい

多関節種目と単関節種目での、大腿四頭筋の活動の違いを比較した研究がある。この研究は、15名の男性が、20、40、60、80%1RM でのレッグエクステンションとレッグプレスを、14名の男性が40、80%1RM でのレッグプレスを限界まで行い、運動中の大腿直筋、外側広筋、内側広筋の活動が表面筋電図で測定された。

結果として、レッグプレスのような股関節の伸展に等縮性負荷が生じる運動では大腿直筋の活動が低下することが分かった。大腿直筋の活動はレッグエクステンションにおいて顕著に増加し、80%1RMのレッグプレスと20%1RMのレッグエクステンションの間の大腿直筋の活動に有意差はなかった。40%1RMと80%1RMのレッグプレスを限界まで行った群では、広筋群の活動は増加したが大腿直筋の活動に変化は見られなかった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27032805/参照。

教科書的なスクワットやプレス動作では、動作中大腿直筋に張力が発生しないため、大腿直筋を鍛えにくい。しかしレッグエクステンションでは大腿直筋に張力を与えやすい。なぜなら二関節筋に張力を与える条件を満たしているからだ。

二関節筋に張力与えるには、二関節筋の両端が同時に引き伸ばされたり、片方の関節が固定されてもう片方の関節が伸長と屈曲を繰り返したり(二関節筋の単関節化)、片方の関節の動きよりももう片方の関節の動きが大きかったりする必要がある。

例えばハックシシ―スクワットやシシ―スクワットは股関節と膝関節が同時に引き伸ばされるため大腿直筋に張力が発生する。コンベンショナルデッドリフトは膝関節屈曲が起こるが、それよりも股関節伸展の方が可動域が広いためハムストリングスを刺激する。レッグエクステンションでは先に挙げた3つの方法で大腿直筋に刺激を入れることができる。

以上のことから、レッグエクステンションでは大腿直筋に張力を与えやすい。

ちなみにスクワット等プレス動作で大腿直筋を狙いたい場合は、上体を屈曲した状態で膝関節伸展ができるようにフォームを変えたりマシンを選んだりする。なぜなら股関節屈曲よりも膝関節伸展の動きが大きくなるからだ。

実際にベルトスクワットやベンデュラムスクワット、レッグプレス等を利用して大腿直筋を刺激しているボディビルダーがいるが、彼らのフォームは教科通りではない。

レッグエクステンションの基本

ここではケガする可能性を低くすること、大腿四頭筋全体を刺激することが目的としたレッグエクステンションに共通する基本事項を解説する。

まずレッグエクステンションを行う際には、ピボットと自身の膝関節の位置を合わせることが重要である。なぜなら位置がずれていると負荷のかかり方の効率が悪くなるだけでなく、ケガの可能性が高くなるからだ。

https://www.lifefitness.com/en-eu/catalog/strength-training/selectorized/hammer-strength-select-leg-extensionより引用。

レッグエクステンションのマシンを、自身のもう一つの脚であるとイメージするとわかりやすい。ピボットから背もたれまでが自身の大腿骨で、脛のパッドからピボットまでの長さが自身の脛骨であると考えると、マシンの調整がやりやすくなる。

次に重要なのは重量設定である。レッグエクステンションではフルレンジで行える重量を選択しよう。なぜなら、レッグエクステンションの良さは大腿四頭筋にダイレクトに負荷を乗せることができる可動域にあるからだ。特に理由なくレッグエクステンションで無理な重量を選択してパーシャルレップになるくらいなら、スクワットやレッグプレスをした方がマシである。

さらに、身体のアライメントを整えることが重要である。なぜならケガを防止することができるからだ。

左はアライメントが整ったレッグエクステンションで、右はミスアライメントの発生しているレッグエクステンションである。

関節や骨が効率的に配置されていることをアライメントが整っているといい、非効率的に配置されている状態をミスアライメントという。基本的にアライメントが整っている方が可動域が広くなりケガ無く重い重量を持つことができる。

力学的観点からの鍛え分けはミスアライメントを意図的に起こして負荷に対して垂直な筋繊維を変えるものと考えられるが、レッグエクステンションに関しては股関節回旋の可動域が少なく、メリットよりもリスクが上回ることが多いため過度な使用は推奨しない。レッグエクステンションでは股関節膝関節足関節をまっすぐに配置してアライメントを整える。

最後に座りについて、骨盤をニュートラルにして座った方が良い。なぜなら骨盤後傾で高負荷をかけると腰回りをケガしやすいからだ。

ただ背もたれを少し後ろに倒し浅く座ることで股関節が後傾するため大腿直筋が通常よりも引き伸ばされる。実際に背もたれを後ろに倒した方が大腿直筋の筋肥大効果が高くなったという研究結果も存在する。しかしこの研究での筋肥大の差は5~10%程度で、リスクの割にメリットが大きいとは言えない。骨盤後傾による大腿直筋の伸びを得るなら、股関節をレッグエクステンションよりも伸展させる形で大腿直筋を伸ばすシシ―スクワット系の方がケガの可能性が低いので有効である。

以上のことから、レッグエクステンションでは、①ピボットと膝関節を合わせる、②最大収縮できる重量を選択する、③ミスアライメントを防ぐ、④骨盤をニュートラルにして座る、の4つが基本になる。

鍛え分け

広筋群狙い

レッグエクステンションでの鍛え分けは大きく広筋群(外側広筋、内側広筋)狙いか、大腿直筋狙いかに分けられる。

高筋群を狙う場合、シートにはしっかりと座る。シートと腰の間に隙間がないように座り浅く座らない。

身体は立てすぎない方が良い。なぜなら最初から身体を立てて動作を行うと高筋群ではなく大腿直筋を使いやすくなるからだ。

フォームをつくったら、あとは純粋に膝を延ばすと良い。脚を身体に近づけるのではなく、遠くに持っていくイメージで行うと良い。なぜなら大腿直筋を使いやすくなるからだ。

脚を身体に近づけるイメージで行うと、上体を倒しがちになり、これにより股関節屈曲が起こり大腿直筋が働きやすくなる。動作中はきつくなっても上体を倒さないことを意識する。

大腿直筋狙い

大腿直筋を狙う場合は、シートには広筋群狙いと同様に座っても、少し倒して座っても良い。大腿直筋を狙う場合、広筋群狙いよりも上体を倒して行う。尿意や腹痛を我慢するとき身体を倒すが、あの感覚で股関節を曲げておく。上体は丸まらないように少し胸を張っておく。

上記のフォームをつくってレッグエクステンションを行うと、高筋群狙いのレッグエクステンションよりも可動域が制限されることが分かる。これは大腿直筋のみで動作できていることを意味しており、制限された可動域が大腿直筋狙いレッグエクステンションのフルレンジとなる。このフォームで行うと通常のレッグエクステンションよりもうんと使用重量が下がるが、それは使用される筋肉が制限されているからであり問題ない。

大腿直筋狙いのレッグエクステンションは腰に膝関節を近づけるイメージで行う。理由は前述している。

全体狙い

全体狙いのレッグエクステンションは高筋群狙いと大腿直筋狙いを合わせたフォームである。このフォームでは大腿四頭筋全てを満遍なくつかうので使用重量は重くなる。

大腿直筋を狙う場合は、シートには広筋群狙いと同様に座っても、少し倒して座っても良い。全体狙いでは骨盤の動きも入れて動作を行う。収縮時に上体を前に倒し骨盤を後傾させることで大腿直筋を収縮させる。ストレッチ時には上体を後ろに倒し骨盤を前傾させ大腿直筋も同時に引き伸ばす。

蹴り上げる感覚で動作を行うとやりやすい。

高筋群の細分化

レッグエクステンションでつま先を逆ハの字にすると内側広筋をハの字にすると外側広筋を狙える。なぜなら足をハの字にすると股関節が内旋するので、レッグエクステンションの負荷と平行な筋繊維が外側広筋に、足を逆ハの字にすると、股関節が外旋することで内側広筋になるからだ。

ここで鍛え分けと可動域について調査した研究を示す。

レッグエクステンションにおいての、脚のポジションと可動域が与える影響について調査した研究では、24名の被験者を、股関節を内旋して行うレッグエクステンション、股関節を外旋して行うレッグエクステンション、脚をニュートラルポジションにして行うレッグエクステンションに分けて、トレーニング時の外側広筋、内側広筋、大腿直筋の活動の違いを筋電図を用いて調査した。

この研究では、レッグエクステンションのスタートポジションを0度、トップポジションを90度として、30度ずつ可動域の範囲を初期区間、中期区間最終区間に分け、それぞれの区間での筋活動の違いも調査した。調査の際のレッグエクステンションの重量は8RMであった。

結果として、6~8レップ目では中間区間が初期区間より筋電図での優位な活動を示し、1~4レップ、6~8レップでは、最終区間が初期区間より筋電図での優位な活動を示した。大腿直筋の活動はレップ数ごとに増加し、股関節外旋位で最も活動が増加した。外側広筋は、股関節外旋位とニュートラルポジションの際に、最終区間に近づくにつれて直線的に増加した。股関節内旋位では、外側広筋は中間区間で筋活動が最大になった。

内側広筋は脚のポジションに関係なく最終区間で活動が最大化し、大腿直筋は股関節外旋位で活動が最大化する、一方で外側広筋は股関節内旋位の中間区間、ニュートラルポジションの最終区間で活動が最大化すると結論付けている。

https://journals.lww.com/nsca-jscr/Fulltext/2014/09000/Range_of_Motion_and_Leg_Rotation_Affect.17.aspx参照。

この研究結果だけを見ると、研究の結果と従来の理論に相違がみられ、レッグエクステンションでは大腿四頭筋の筋活動を増加させるために脚のポジションはあまり関係ないように思える。また、全体的に大腿四頭筋の筋活動は最終区間に近づくにつれて活性化しているため、足の位置よりもトップポジションまでフルレンジで動作を行い、筋肉に負荷がかかる時間を増やすことが重要であるように思える。

従来の理論は力学的観点からの鍛え分け方法であり効果はある。ただメリットに対してリスクは小さくない。なぜなら高筋群の鍛え分けはミスアライメントの状態で高負荷をかけることを意味するからだ。股関節回旋の可動域は他の関節よりも狭く、ミスアライメントによるケガが他の部位よりも発生しやすい。

例えば上腕二頭筋短頭狙いの場合は肩関節を少し外旋させ、長頭狙いでは肩関節を少し内旋させる。これもミスアライメントをつくっているが、肩関節の外旋と内旋の可動域は60度と80度程度と広い。一方で股関節外旋と内旋の可動域はともに45度程度である。鍛え分けするには関節可動域が狭い。

以上のことからレッグエクステンションでの高筋群の鍛え分けは決してリスクが低い者ではないといえる。筆者は、レッグエクステンションはスクワットよりも広い可動域で大腿四頭筋にダイレクトに刺激を入れることができる点に独自性があるため、鍛え分けよりも基本のフォームを優先するべきと考える。また高筋群の鍛え分けをする際は過度に行わない方が良いと考える。具体的にはつま先を内側若しくは外側にに15~30度の範囲傾けるだけで効果を得ることができるだろう。

従来の理論が有効に使える場面も考えられる。例えばつま先が他の人より外を向いている癖を持っている人は、レッグエクステンションを行う際に少しつま先を内側に入れるようにすると、内側広筋だけでなく大腿四頭筋全体を鍛えることができる。筆者はトレーニング始めたての時に、大腿四頭筋の内側広筋ばかり大きくなることに気づいた。筆者は他の人よりつま先が外に向きやすい特徴を持っていたのだ。そこでレッグエクステンションでつま先を平行になるように足の位置を変えることで、大腿直筋や外側広筋も鍛えられるようになった。

https://simplenursing.com/differences-between-male-female-pelvis/より引用。

このようにつま先が常に外側に向いている人は、レッグエクステンションにて無意識に内側広筋を重点的に鍛えてしまい、外側広筋や大腿直筋がうまく発達しないことがある。個人的にはつま先が外側に向いている人は男性に多く、女性はつま先がまっすぐになっている傾向が強いように思る。筆者は骨盤の性差によるものではないかと推測している。

レッグエクステンションではつま先を平行にしてフルレンジで行うことが基本である。ただ外側広筋や内側広筋の発達に遅れを感じるときはつま先による鍛え分けを行うことも検討に入る。ただこれは前述したがミスアライメントを意図的に引き起こすことになるので注意である。過度につま先を変える必要はない。目安としてはつま先がニュートラルな位置から10度つま先を傾ける程度で問題ない。過度な股関節の回旋内旋はミスアライメントを大きくし関節や靭帯をケガする可能性が高くなる。

レッグエクステンションの持つリスク

膝への負担

レッグエクステンションは膝関節への負担が大きいといわれている。結論としてレッグエクステンションはプレス動作と比較して少しだけ膝への負担が高いといえる。

膝関節伸展30度から完全伸展までの範囲で前十字靭帯に負荷がかかることが示唆されている。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6725319/参照。

レッグエクステンションとその他プレス系種目での膝蓋大腿関節への負担を比較した研究を示す。

この研究ではレッグプレスとレッグエクステンションでの運動中の膝蓋大腿関節にかかる負担を、膝モーメント、膝蓋大腿関節反力、関節ストレスとして計算して比較した。被験者は20人で18歳~45歳の男女10名ずつであった。膝蓋大腿関節への負担は膝関節屈曲0度、30度、60度、90度でそれぞれ計算された。

結果は、膝関節屈曲0度と30度でレッグエクステンションの方がレッグプレスよりも負担が高く、60度と90度ではレッグプレスの方がレッグエクステンションよりも負担が高いということを示した。関節への負担は屈曲48度付近で交差することが明らかになった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8346760/参照。

https://www.stretch-up.jp/blog/musashiseki/body-musashiseki/%E3%81%9D%E3%81%AE%E6%AD%A9%E3%81%8D%E6%96%B9%E3%81%A0%E3%81%A8%E8%B6%B3%E3%81%8C%E5%A4%AA%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99/及びhttps://www.painsolutionsqld.com.au/post/why-won-t-my-knee-pain-go-awayより筆者編集。膝蓋大腿関節とは膝蓋骨と大腿骨を繋ぐ関節のことである。

スクワット、シーテッドレッグプレス、レッグエクステンションでの膝蓋大腿関節へのストレスを比較した研究でも、膝関節屈曲90度に近づくにつれてスクワットでの関節への負担は高くなり、膝関節屈曲0度に近づくにつれてレッグエクステンションの関節への負担は高くなることが報告された。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24673446/参照。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24673446/より引用。膝関節角度が0度から90度に変化するにつれてスクワットでの膝蓋大腿関節への負担が高くなり、レッグエクステンションではスクワットとは逆に0度から90度に近づくにつれて負担が少なくなっていることが分かる。

研究結果を考察すると、レッグエクステンションが膝関節へ負担があることは間違いないが、レッグプレスやスクワットといったプレス系種目でも、大腿四頭筋が働くトップからパラレルまでの局面では膝関節への負担がレッグエクステンションに劣らない程度に発生することが分かる。また膝蓋大腿関節への負担が大きくなった膝関節角度は、レッグエクステンションでは動作の最大収縮付近で、スクワットとレッグプレスではパラレルの位置である。両方とも動作の中で大腿四頭筋が最も働く局面である。

以上のことから、大腿四頭筋が働くことは関節への負担も大きくなることを意味するので、レッグエクステンションがプレス系種目よりも膝関節への負担が高いとは言えない。

レッグエクステンションでもプレス動作でも同等の負担が膝関節にかかるが、プレス系種目は股関節へ負担を分散できるからプレス系種目の方がケガをしにくいと考えることもできる。しかしプレス系種目は重量という形で負荷を与えるので、レッグエクステンションと同等の負担を大腿四頭筋に与えるためには股関節への負担も大きくなる重量を採用することになる。そのため股関節との負荷の分散を理由に、プレス動作ならレッグエクステンションより膝関節への負担を軽減できるとは言えない。

レッグエクステンションは最大収縮で負荷が発生するため、膝蓋骨付近に大きなせん断力が発生する。これはパラレル付近で最大負荷が発生しトップでは負荷が発生しないプレス系種目にはない特徴である。

このせん断力がレッグエクステンションの持つ膝関節付近への大きな負担である。レッグエクステンションは膝関節へかかる実際の負担はプレス系と大差ないが、せん断力が追加されるので膝関節リスクがプレス系種目よりも高いといわざるを得ない。

以上のことから、レッグエクステンションはプレス系種目と比較して特別膝関節へ負担のかかる種目ではないが、せん断力の発生というプレス系種目にはないことが最大収縮位で起こるためレッグエクステンションがプレス系種目よりも膝関節へかかる負荷が高い種目であるといえる。

膝への負担の対策

まず一つ目の対策として、重量オーバーロードの上限を決めることである。重量によりかかる関節への負担を決めて置き、重量以外の方法でオーバーロードを達成するようにするのだ。

レッグエクステンションはマシンによってカムの大きさが異なるので絶対的重量は断言できないが、よく使うマシンで使う重量の上限を決めると良いだろう。例えば筆者が2024年10月現在頻繁に使用しているジムにはcybexのレッグエクステンションがある。これのフルスタックが131㎏なのだが筆者は現在80㎏10回とかのレベルである。まだ重量オーバーロードできる余裕が膝関節にあると思うが、100㎏10回とかできるレベルになると重量オーバーロードはいったんものすごくゆっくりにしようと考えている。

重量オーバーロードが筋肥大の基本なのであるが、筋肥大に有効なボリュームが前回よりも多ければ漸進的に筋肥大ができるので、レッグエクステンションに関しては重量以外のオーバーロード方法を持っておくと良いだろう。例えば前回より1回でも多くこなすとか、レストポーズを1回追加するとか、ドロップセットを入れるとか、1セット多くしてみるとかである。こうすると重量によるケガのリスクを少なくしつつ負荷を高めていける。特に限界まで行った後でのドロップセットは本来よりも少ない重量で重い重量を行うのと同様の負荷を筋繊維に与えることができるので、膝への負担を軽減できてお勧めである。

もうひとつの対策は筆者の推測が入っているのであまり信頼しなくて良いが、レッグエクステンションで2段階に分けて足を最大収縮位までもっていくことである。

スタートポジションから膝関節屈曲位30度までを1段階、屈曲位30度から0度までを2段階として、1段階から2段階に移行するときに少し速度を落として最大収縮する。なぜならスピードによる負荷を少なくするためである。

例えばベンチプレス等のプレス動作でネガティブでバーをすとんと落として切り返しで力を入れる人を見たことがないだろうか。この場合筋肉と腱に重量と降ろすときのスピードの積が負荷としてかかる。積なので重量があげるほど筋肉と腱を断裂する可能性は高くなる。

この重量とスピードの積が負荷として発生する現象は、キックバックやレイズ系種目、一部の背中の種目では逆に負荷の発生しないボトムで負荷を発生させるテクニックとしても利用できるが、ボトムで最大負荷の乗るプレス系種目ではケガの可能性が高くなるのでご法度である。そしてこのような状況がレッグエクステンションでも起こると考えられる。

爆発的挙上は筋肥大の観点からどんな種目でも重要なのだが、レッグエクステンションで最大収縮位まで素早く挙げようとして、最大収縮位で止まった時(レッグエクステンションの設計上これ以上パッドが挙がらないところがある。)に自身が発生させた力と速度の積が関節に負荷として発生する。レッグエクステンションの重量が重くなればなるほどこの負荷は大きくなる。

この負荷を特にレッグエクステンションでの膝関節の負担が大きくなる局面で少なくするために、膝関節屈曲30度付近で少し減速して最大収縮までもっていく。こうすることで速度による負荷を少なくすることができるので膝関節への負担を少なくできると考えられる。

以上のことから、重量オーバーロードに上限を設けることと2段階に分けて収縮を行うことで、レッグエクステンションでの膝関節への負担を軽減できると考える。

まとめ

この記事では大腿四頭筋の解剖学とレッグエクステンションについて解説した。

大腿四頭筋は4つの筋で構成され、主に膝関節伸展に関与する。中でも外側広筋は脚のアウトライン形成、内側広筋は膝安定に寄与し、大腿直筋は二関節筋として股関節屈曲にも関与する。

大腿四頭筋の筋肥大に限定するなら、スクワットよりも、膝関節伸展に直接負荷をかけられるレッグエクステンションの方が再現性が高く効果的である。

レッグエクステンションでは、ピボットと膝関節を合わせること、最大収縮できる重量設定、アライメントをただすこと、骨盤をニュートラル位置に保持することが重要である。

レッグエクステンションの鍛え分けは、広筋群、大腿直筋、全体狙いでフォームを変えるが、股関節回旋による広筋群のさらなる調整はケガのリスクもあり、基本フォームを優先すべきである。

レッグエクステンションはプレス系種目と同等の膝負担に加えて、最大収縮時のせん断力により膝関節への負荷が高くなる。対策は重量制限と動作を2段階に分けることがあげられる。

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