テストステロンの観点からタンパク質摂取を考察する。

はじめに

この記事では、テストステロンの観点から、適切なタンパク質摂取を解説する。

タンパク質の摂取は健康及び筋肥大に置いて重要である。なぜなら骨格筋はタンパク質で構成されており、アミノ酸はヒトのアナボリック活動の材料となるからだ。

タンパク質摂取が重要であることは自明だが、それの摂取プランを考える際の明確な基準は存在しない。これでは再現性が低く、継続的に健康と筋肥大を最適化することができなくなる。そのためこの記事では、テストステロンを最適化するという基準のもと、タンパク質をどう摂取すると良いかを解説する。

タンパク質摂取の最適化

過剰摂取を控える

タンパク質は重要であるが、とればとるほど筋肥大につながるわけではない。なぜなら、タンパク質の過剰摂取がテストステロン量の低下を招く可能性が高いらだ。

タンパク質量と総テストステロン量の関係を調査したメタアナリシスでは、体重×3.4g以上のタンパク質摂取で総テストステロン量が有意に低下することが報告された。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36266956/参照。

この研究では、体重×3.4g以下では総テストステロン量の低下は見られなかった。

タンパク質の過剰摂取がテストステロンに与える負の影響は間接的と思われる。なぜなら多くのタンパク質を摂取することで、炭水化物及び脂質の摂取量が制限されるからだ。

脂質量が制限されることはコレストロールの材料が少なくなることを意味し、テストステロン生合成が抑制される。また炭水化物量が制限されることでストレスが増加しテストステロンのコルチゾール変換が亢進したり、トレーニングのリカバリー速度の低下、アナボリック活動のエネルギー源の減少が引きおこる。タンパク質を過剰摂取することが直接的にテストステロン量を低下させるわけではないと思われる。

以上のことから、過剰なタンパク質摂取は間接的にテストステロン量を低下させる。先の研究を参考に、体重×3.4g以上の摂取は基本的に推奨しない。

摂取量の下限

タンパク質は少なくとも体重×1.62g摂取したい。なぜならこの量のタンパク質を摂取することで、筋肥大に必要なアミノ酸を賄うことができるからだ。

タンパク質摂取と筋力トレーニングによる筋肥大効率の関係を調査した研究では、体重×1.62g以上タンパク質を摂取しても、筋肥大効率に有意差がないことを報告した。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28698222/参照。

この研究から、体重×1.62gのタンパク質を摂取すれば、ヒトの通常の生命活動に追加して筋肥大に必要なアミノ酸を賄えることが分かる。

この研究は被験者の行ったトレーニング内容や摂取したタンパク質の内容が明確ではないが、摂取するタンパク質の下限の基準として利用できる。

しかしトレーニングの頻度が高く、一日の多くの時間帯をアナボリック優位で過ごすことができているヒトなら、体重×1.62g以上のタンパク質をとった方が筋肥大効率は高くなるだろう。アナボリック環境を長く構築しているにもかかわらず、タンパク質をあえて制限する理由はない。

この研究結果が適用できるのは、トレーニング頻度が週2~3回程度のヒトだろう。それ以上の頻度の人は体重×2~2.5g程度の量摂取すると良い。

ちなみに総摂取カロリーの2~10%タンパク質を摂取する群と、17%~23%摂取する群とを比較した研究では、低タンパク質群では血清テストステロン、FSHレベルなどが有意に低下している。筋肥大を目指していろうがなかろうが、層摂取カロリーの20%はタンパク質を摂取したい。

タンパク質の摂取頻度

タンパク質は摂取タイミングよりも摂取量の方が重要である。なぜなら、タンパク質の吸収速度と、アミノ酸の利用効率はタイミングに依存しないからだ。

トレーニング後のタンパク質摂取量による筋肥大反応の違いを調査した研究では、トレ後25gのタンパク質摂取よりも、100gのタンパク質摂取の方が12時間後の筋肥大反応が高く保たれることが報告された。

https://www.cell.com/cell-reports-medicine/fulltext/S2666-3791(23)00540-2?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS2666379123005402%3Fshowall%3Dtrue参照。

この研究から、タンパク質をいつ摂取したとしても、タンパク質吸収速度とアミノ酸利用効率は個体に依存するということが分かった。

例えば1時間で30個の製品をつくれる工場に、1時間ごとに30個分の材料を5回納品しても、朝一に150個分納品しても、従業員や機械が変わらないので作業効率は変わらない。これと同じことがヒトの体内で起こっている。

以上のことから、タンパク質の摂取頻度よりも摂取量の方が重要といえる。

この研究で摂取されたタンパク質量は100gなので、これ以上の摂取で同様の結果が起こるかはわからない。また一度に大量のタンパク質を摂取することは、肝臓や腎臓に負担をかける可能性が高いので、万人に推奨できる方法ではない。

ただ仕事や過集中を理由にタンパク質摂取が遅れたとしても、ほとんどの人は気にする必要がないだろう。タンパク質の吸収効率とアミノ酸の利用効率が頻度ではなく個体に依存するので、優先して気にする要素は頻度ではなく小腸の炎症や補酵素といった要素である。

食事誘発性熱産生(DIT)

タンパク質はそれ自体を消費するエネルギーが多いので、脂質と炭水化物と比較して多めに摂取するメリットが大きい。

1DITは、カロリーを消費するために消費されるカロリーで、タンパク質のDITは炭水化物と脂質と比較して高い。

まとめ

この記事では、テストステロンの観点から、適切なタンパク質摂取を解説した。

この記事では、テストステロンを最適化する視点から、タンパク質の摂取方法について解説している。過剰摂取はテストステロンの低下を招く可能性があり、体重×3.4g以上は推奨されない。一方で、筋肥大に必要な最低摂取量は体重×1.62gであり、トレーニング頻度に応じて2~2.5g程度まで増やすと良い。摂取タイミングよりも摂取量が重要で、吸収効率は個体差に依存するため、頻度を気にする必要は少ない。また、タンパク質はDITが高く、脂質や炭水化物よりも代謝効率が良いとされる

参考文献

  1. https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikisho/38/3/38_3_63/_pdf/-char/ja#:~:text=DIT%20%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E7%86%B1%E7%94%A3%E7%94%9F%E9%87%8F,%EF%BC%88%E9%88%B4%E6%9C%A8%E3%82%89%EF%BC%8C1951%EF%BC%89%EF%BC%8E ↩︎

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