テストステロン合成における亜鉛の役割

はじめに

この記事では、テストステロン合成における亜鉛の役割を解説する。

亜鉛は健康を維持するだけでなく、筋肥大に置いて重要なホルモンである。なぜなら亜鉛は活性酸素を還元するだけでなく、テストステロン合成に直接寄与するからだ。活性酸素が除去されることは組織へのダメージが軽減されることを意味し、テストステロンの増加と筋肥大には相関関係がある。

以上のことから、亜鉛は健康と筋肥大を最適化するうえで重要なミネラルである。この記事では亜鉛は身体に与える作用を解説し、それの効果を享受する摂取方法について解説する。

亜鉛の作用

SOD構成

亜鉛は活性酸素を過酸化水素と酸素に変換する。活性酸素を過酸化水素と酸素に変換する酵素をSODといい、亜鉛は銅と共にSODを構成する。

活性酸素についてはこちらの記事で解説しているので参照してほしい。

以上のことから、亜鉛は活性酸素を無害化することで健康と筋肥大に寄与する。

例えば精巣のライディッヒ細胞は細胞の中でも酸化ストレスに弱いことが分かっている。実際に酸化ストレスに晒されている環境では精巣での精子形成効率が低下することも報告されている。そのため亜鉛はライディッヒ細胞を酸化ストレスから守ることでテストステロン合成に寄与する。

亜鉛摂取制限の影響

亜鉛摂取を制限することで、精子形成及びテストステロン生合成が低下することが報告されている。

この研究では、亜鉛摂取制限(一日2.7㎎~5.0㎎)が男性の精子形成に与える影響が調査された。結果として被験者5名中4名に精子減少症が報告された。期間は24~40週、平均年齢は57歳であった。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6772723/参照

この研究から、亜鉛欠乏によって精子形成に悪影響が発生することが分かる。被験者には亜鉛制限後に適正量の亜鉛が投与され、被験者の精子形成が改善された。このことから亜鉛欠乏による影響は可逆的であることが分かる。

精子形成とテストステロン合成は、それぞれ異なる経路を持つので、この研究だけでは亜鉛制限がテストステロン合成に悪影響を及ぼすとは言えない。

この研究では、亜鉛摂取の制限と、細胞内亜鉛濃度及び血清テストステロン濃度の関係が調査された。被験者は20~80歳の男性40名で、男性4名(平均年齢27.5歳)に食餌中の亜鉛摂取制限、男性9名(平均年齢64歳)に3~6回月の期間459molの亜鉛(グルコン酸亜鉛)を系統投与した。

結果として、亜鉛摂取制限と血清テストステロン濃度には相関関係が見られた。高齢男性の被験者への亜鉛補充後に血清テストステロン濃度が有意に増加した。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8875519/参照。

この研究から、亜鉛摂取の制限が、精子形成だけでなく、血清テストステロン濃度に関しても影響を及ぼすことと、それが可逆的であることが分かった。

以上のことから、亜鉛摂取と精子形成及びテストステロン生合成に関係があることが分かる。

テストステロン合成に対する亜鉛のメカニズム

https://bsd.neuroinf.jp/w/index.php?title=%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89&printable=yesより引用。コレステロールがテストステロン及びエストロゲンへと変換される経路を示した画像。

亜鉛は、ライディッヒ細胞内の局所的な代謝を亢進することで、テストステロン生合成に寄与するといわれている。

https://www.tandfonline.com/doi/10.1080/13685538.2019.1573220?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed#d1e214より引用。

上の図は、ライディッヒ細胞内での亜鉛の作用とテストステロン合成について示した図である。

まずライディッヒ細胞へ亜鉛が吸収されると、Zinc-Protein A20のというタンパク質を介して、核内外の酸化と炎症が緩和される。

核内では、P450c17の発現で亜鉛濃度が上昇し、A20mRNAをアップレギュレーションさせる。亜鉛はステロイド生成因子1(SF1)の転写因子として機能し、これがスタータンパク質(StAR)合成の前駆物質となる。

ミトコンドリア内では、亜鉛はP450sccと共にプレグネノロンの合成を助ける。小胞体でも、亜鉛はP450c17の活性化を通して、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)のテストステロン変換を助ける。

以上のことをまとめると、亜鉛はライディッヒ細胞内で、抗酸化作用と酵素活性を通してテストステロン生合成を促進させるといえる。

ちなみにラット実験ではあるが亜鉛は黄体形成ホルモン(LH)の分泌には直接関与しないと考えられている。

亜鉛不足はHPG軸(視床下部-下垂体-性腺)に影響を及ぼすことなくテストステロンレベルを低下させたことが報告されている。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25624578/参照。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2517451/参照。

この研究から、亜鉛はライディッヒ細胞内でテストステロン生合成を促進させるが、LHやFSHといったホルモンの分泌を促進するとは言えない。

亜鉛の摂取量

RDAとUL

RDA(Recommended dietary allowance)とUL(Upper intake level)に基づくと、亜鉛元素の一日推奨摂取量は男性11㎎、女性8㎎で、上限は一日40㎎である。

この二つの基準は、一般的なヒトで健康被害が出ない量の目安である。健康を維持するレベルであれば、一日30~40㎎の摂取を推奨する。

先に挙げた亜鉛の作用を発揮させるなら、筆者は40㎎より多い摂取を勧める。なぜなら多くの作用を発揮させるためには、より多くの亜鉛が必要になるからだ。

摂取量上限と補助施策

50~100㎎の亜鉛元素摂取が、健康と筋肥大を目指す多くの人にとって有効な摂取量と考えられる。なぜなら100㎎以上の摂取で副作用が報告されているからだ。

例えば性腺機能低下症(低テストステロン症)患者への治療としての亜鉛の推奨摂取量は、一日2回50㎎とされている。また亜鉛元素100㎎の摂取で前立腺がんリスクが増加したという研究が報告されている。

以上のことから、筋肥大を目指す人や亜鉛の作用を享受したい多くの人にとって有効な摂取量は、50~100㎎の範囲といえる。

亜鉛を50㎎以上摂取する場合、亜鉛摂取量の10%にあたる銅を摂取することと、マグネシウムを多めに摂取することを推奨する。なぜなら亜鉛が銅の吸収を阻害するし、亜鉛の作用発揮にはマグネシウムが必要だからだ。

亜鉛と銅の吸収経路は同じで、亜鉛を大量に摂取すると、銅の吸収が阻害される。銅が不足するとコラーゲン生成や低下したり神経保護が低下し、回復を阻害する。そのため亜鉛を推奨摂取量を超えて摂取する場合は、亜鉛の10%程度の銅を摂取する。

ちなみに銅の過剰摂取は逆に亜鉛の吸収を阻害するので注意だ。またマグネシウムはヒトの生命活動の多くの活性酵素として働くので、亜鉛による効果をより享受するために多めに摂取する。

筆者は一日82㎎の亜鉛と同時に、6.9㎎の銅を摂取している。

まとめ

今回は、亜鉛が健康と筋肥大に与える影響解説した。

亜鉛はテストステロン生合成の促進や、SODの構成を通して健康と筋肥大に貢献する。亜鉛は精巣のライディッヒ細胞で酵素を活性化させたり、ライディッヒ細胞を酸化ストレスから守ることで、テストステロン生合成を助ける。

亜鉛の推奨摂取量は40㎎以下であるが、銅やマグネシウムの適切な摂取を行うことで、50〜100mg摂取しより効果を享受することができる。

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