トレーニングテンポの最適化

はじめに

この記事では、筋肥大を目的とした際のトレーニングテンポの最適化を図る。

1レップのテンポは、大きくポジティブ局面とネガティブ局面に分けられる。この二つの局面をどのように行うことがもっとも筋肥大効率が良いのかを考察していく。

ポジティブ局面

爆発的挙上

仕事率とサイズの原理に基づくと、ポジティブはできるだけ早く行うことが推奨される。

仕事率に関してはこの記事で解説している。

サイズの原理については此方で解説している。素早く挙上するほうがⅡ型繊維を多く動員しやすい。

レンジ

これは基本的にフルレンジである。これは仕事率の観点から理解できる。ただ対象筋の狙い方によって外からみたレンジが変わる。

パラレルスクワットとフルスクワットでは、大腿四頭筋の活動に有意差がない。このことから、特定の骨格筋のレンジには閾値があることが示唆される。もしあなたの目的が「脚を大きくする」ことであるならば、フルスクワットが目的に対してのフルレンジなのだが、「大腿四頭筋を狙う」ということであるならば、パラレルスクワットが目的に対してのフルレンジとなる。

このように、ターゲティングを細かく行うかどうかによってフルレンジの範囲が変わってくる。しかし見た目は変わろうが本質的には目的に対してフルレンジであることは変わらない。

まとめ

ポジティブ局面は、「フルレンジで爆発的挙上で行う」ことが筋肥大において効果的である。

ネガティブ局面

ボトム

ネガティブのボトム局面では、0.5秒ほど静止すると良い。これは腱の弾性力を消失させるためにである。

筋腱複合体と腱の弾性力に関してはこちらで解説している。

ネガティブ>ポジティブ

筋肥大を目的とした場合、ポジティブ局面よりもネガティブ局面に時間を費やした方が効率的である。

11人の被験者(年齢23.5±5.4歳、身長1.79±0.04m、体重79.1±6.4kg)を、2セット6回ネガティブを速くする群と、2セット3回ネガティブをゆっくりする群に分け、筋肥大効果を比較した。両者のTUTは同じである。

結果として筋肥大効果に有意差はなかった。

https://www.mdpi.com/2411-5142/10/1/4参照。

この研究からわかることは、TUTが同じである場合、エキセントリック収縮とコンセントリック収縮で筋肥大効果に差がないことである。1このことは他の研究でも報告されている。しかしエキセントリック収縮を高めた方が同等のレップでも多くのTUTを確保できることも分かった。

なぜエキセントリック収縮の方がコンセントリック収縮よりも重視されるのか、それは使用できるエネルギーを効率的に使用できるからである。

筋収縮にはカルシウムが必要なのだが、これはポジティブ局面で消費する。骨格筋が限界を迎えるにつれて筋小胞体からのカルシウムイオンの放出が阻害されることで筋収縮が阻害される。

筋収縮に必要なATPを100%とすると、ネガティブ局面でのATP消費は3割程度といわれている。ネガティブを享受するためには筋収縮が必要である。

これらのことから、ポジティブ局面をできるだけ速く行い。ネガティブに時間を抱えることが、使用できるエネルギーを筋肥大のために最大限利用する方法と考えられる。

ネガティブ局面にかける時間

ポジティブを素早く行い、ネガティブに時間をかけることが筋肥大に置いて効率的であるが、実際どれくらいの時間をかけると良いのだろうか。

エキセントリック収縮の違いによる結果の比較を行った研究は多く存在する。これらをまとめたシステマティックレビューを参照する。

エキセントリック収縮、コンセントリック収縮、1レップ内の筋活動持続時間(MAD)が、筋力、パワー、筋肥大に与える影響を分析したシステマティックレビューでは、トレーニング初心者である場合MADが14秒まで長くても筋肥大が可能であるが8秒を超えると筋肥大率が低下すること、トレーニング経験者の場合4~7秒のMADが適切であることが報告された。

https://journals.lww.com/nsca-scj/abstract/2022/10000/effect_of_repetition_duration_total_and_in.4.aspx参照。

この研究から、トレーニング経験に関わらず1レップにかける時間は7~8秒までということが分かる。

ポジティブに書ける時間を0~1秒とした場合、6~7秒のネガティブがかけられる最大といえる。逆にこれ以上のネガティブは筋肥大効率を低下させる可能性がある。

ネガティブを受けることが目的になってしまってはいけない。筋腱複合体のところでも解説したが、ネガティブは止めるように受けると腱の弾性力を使ってしまう。

まとめ

ポジティブ局面は、「フルレンジで爆発的に挙上する」

ネガティブ局面は、「~7秒程度ネガティブを受ける。その際止めるように受けない」

以上が筋肥大を目的としたトレーニングテンポになる。筆者は先のテンポを遵守したうえで、MADを5~6秒とるようにしている。

このテンポを遵守している例としてIFBBプロボディビルダーのNick Walkerがあげられる。彼のテンポは参考になるので一度見てみると良い。

参考文献

  1. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39652733/ ↩︎

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