はじめに
この記事ではハムストリングスについて解説する。ハムストリングスの解剖学とハムストリングスを鍛える上で知っておきたい事項、代表的トレーニング種目について解説する。
この記事を読むことで、自分の目的に合わせてトレーニング種目やフォームの設定が可能になる。
ハムストリングスの解剖学
出典:ネッター解剖学原著第4版
起始停止
ハムストリングスは、大腿二頭筋長頭及び短頭、半腱様筋、半膜様筋から構成される骨格筋の総称である。
大腿二頭筋長頭は座骨結節に起始を持ち、脛骨外側顆と腓骨頭に停止する。大腿二頭筋短頭は大腿骨粗面の下半分に位置する外側顆の稜線に停止する。
半膜様筋は半腱様筋の深層に位置する。半膜様筋は座骨結節に起始を持ち、脛骨内側顆の後内側に停止する。半腱様筋は半膜様筋より表層に位置する。座骨結節に起始を持ち、高潔粗面の内側に停止する。
ハムストリングスの起始停止に関しては、座骨結節から脛骨および腓骨に位置し、後面から見て右側が大腿二頭筋、左側が半腱様筋及び半膜様筋という認識で問題ない。
機能
ハムストリングスを構成する骨格筋は、股関節伸展と膝関節屈曲、股関節の回旋運動に寄与する。
大腿二頭筋短頭は股関節をまたがない単関節筋なので膝関節屈曲の機能のみを持つが、ハムストリングスを構成する他の骨格筋は二関節筋で、股関節の伸展と膝関節の屈曲を主な作用として持つ。
大腿二頭筋長頭と半腱様筋は半膜様筋と比較してやや大きな股関節伸展モーメントを持ち、半腱様筋は半膜様筋及び大腿二頭筋長頭と比較してやや大きな膝関節屈曲モーメントを持つため、大腿二頭筋長頭は特に股関節伸展運動において、半腱様筋は膝関節屈曲運動において他の骨格筋よりも効率的に運動に参加すると考えられる。ヒップヒンジ種目はハムストリングスの中でも大腿二頭筋長頭を狙いやすく、カール系種目は半腱様筋を狙いやすいといえる。
大腿二頭筋長頭は股関節伸展と膝関節屈曲動作に加えて股関節外旋動作を持つ。一方で半腱様筋と半膜様筋は主な動作に加えて股関節内旋動作を持つ。回旋機能の違いから大腿二頭筋長頭は外側ハムストリングス、半腱様筋及び半膜様筋は内側ハムストリングスとも呼ばれる。
ハムストリングスのあれこれ
構造
ハムストリングスは全力疾走や加速といった瞬発的な動作に寄与する骨格筋である。そのため最大張力に達するまでの速度が速いⅡ型繊維が全体の多くを占める特徴がある。
単関節筋は一つの関節で動くため関節の固定に優れており、二関節筋は複数の関節をコントロールする役割を持つ。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkpt/2/0/2_0_17/_pdf/-char/en参照。
ハムストリングスは股関節から膝関節をまたぐ二関節筋である。役割の違いより前者より後者の方がⅡ型繊維が多いという傾向とハムストリングスは合致する。
ハムストリングスの中でも大腿二頭筋長頭と半膜様筋は羽状筋と分類することができ、半腱様筋は紡錘状筋と分類することができる。羽状筋と紡錘状筋の特徴から、大腿二頭筋長頭は高重量高ボリュームに反応しやすく、半腱様筋は素早い運動とストレッチに反応しやすい。
ハムストリングス全体の中では、大腿二頭筋長頭が最も大きく、全体の40%ほどを占めるといわれる。そして半膜様筋が約35%、半腱様筋が約20%と続く。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsma1939/51/2/51_2_151/_pdf/-char/ja参照。
股関節外旋と内旋による鍛え分け
ハムストリングスは股関節回旋動作に寄与することを説明した。股関節の回旋具合でハムストリングスへの刺激がどう変わるかを調査した研究を示し、刺激の変化を考察する。
この研究では、膝関節屈曲運動、つまりレッグカールにおけるハムストリングス4筋の活動に違いが調査された。被験者は男性10名で、股関節0度の伏臥位で膝関節角度60度、90度の角度で、下腿を中間位、外旋位及び内旋位に固定した肢位での各筋の活動の違いが筋電図によって調査された。
研究結果は以下のとおりである。膝関節屈曲トルクは下腿の回旋具合に関係なく屈曲60度の方が90度よりも有意に高かった。中間位と比較して、外旋位では大腿二頭筋長頭と短頭の活動が増加し半腱様筋と半膜様筋の活動が低下した。内旋位では半腱様筋と半膜様筋の活動が増加し大腿二頭筋長頭と短頭の活動が低下した。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/26/2/26_KJ00003131556/_pdf参照。
この研究結果では、ハムストリングスの活動しやすい局面は動作の中間にあると結論付けられている。ただ、「ハムストリングスの活動は膝関節60度の方が90度より高い。」とこの研究だけでは断言できない。というのもこの研究で行われたレッグカールの詳細が分からないのだ。例えば足関節付近に足かせのようにバンドをつけて、ケーブルでレッグカールを行った場合では、重力の方向が変化して膝関節60度が最も負荷の乗る局面になる。
ケーブルレッグカールとダンベルレッグカールの比較。ケーブルの特性上最大トルクが発生する位置がダンベルレッグカールよりも足関節屈曲位にあることが分かる。
ハムストリングスでもストレッチ局面が重要になる。ただハムストリングスはヒトの骨格筋の中でも断裂しやすい場面で、その原因の一つに過度なエキセントリック収縮というものがある。過度なエキセントリック収縮とは過度な重量でのエキセントリック収縮であり、ハムストリングスの重量オーバーロードは他の部位よりも特に慎重に行うべきである。ただ複数の研究でハムストリングスに適度なエキセントリック収縮をかけることでハムストリングスの断裂を防止できることが示唆されている。このことから軽度と過度の間を狙う重量でのコントロールが重要になる。
足関節の回旋具合は、ハムストリングスの鍛え分けに応用することができる。鍛え分けには神経伝達の側面からのものと、力学の側面からのものがあると筆者は考えている。足関節の回旋は後者で、足関節回旋によって重力に対して垂直となる面(≒筋繊維)が変化する。重力に対して垂直な筋繊維が最も仕事をする部位で、片腕片脚にしたりフォームを変えたりするのは重量に対して垂直な筋繊維を変えるためで、これが力学的鍛え分けの基本である。
少しわかりずらい図になったが、真ん中が中間位でのレッグカールで左が内旋時、右が外旋時のレッグカールである。重力に対して垂直な筋繊維が異なることが分かる。
足関節回旋による鍛え分けは、ヒップヒンジ種目とレッグカール種目の両方で応用可能なテクニックである。つま先を逆ハの字にすると大腿二頭筋長頭を、ハの字にすると半腱様筋を狙いやすくなる。
実際にやってみると、ハの字を維持したままレッグカールをすることが困難であることが分かる。これは外側広筋狙いのハの字スクワットでしゃがめなくなるのと同じで、膝関節が内側に入ってしまうからである。片脚でレッグカールを行うと、半腱様筋に集中して狙うことができる。
ハムストリングストレーニング①(ヒップヒンジ)
ここまででハムストリングスの解剖学と基本的事項を解説した。ここからは以下ではハムストリングスを鍛える基本的な種目を解説する。ハムストリングスを鍛える種目はヒップヒンジ種目とカール系種目に分類できる。まずはヒップヒンジ種目について解説する。
最初にヒップヒンジ動作についてを説明する。次に代表的なヒップヒンジ種目であるコンベンショナルデッドリフト、スモウデッドリフト、スティッフレッグデッド、バックエクステンションを、筋肥大の観点から比較する。
ヒップヒンジ動作とは?
ヒンジとは、日本語でいう「蝶番」のことである。蝶番の開閉動作のように、ほとんど伸展と屈曲の動作しか行わない肘関節と膝関節は、「hinge joint」、日本語では「蝶番関節」と訳される。ヒップヒンジ動作とは、股関節の伸展動作であり、蝶番のように股関節を動かす動作である。
ヒップヒンジ種目はこの動作に負荷をかける種目でデッドリフトがまさにヒップヒンジ動作である。
ヒップヒンジ動作は人の基本的な動作で、筋トレでは多くのチーティング動作で使用されている。ヒップヒンジが上達することで、効果的なチーティングがうまくなるという利点が存在する。またバーベルローイングやプーリーローといった種目は上体をヒップヒンジで固定して動作する必要があるためヒップヒンジがうまくないとそもそもできなかったりする。
ヒップヒンジ動作であるデッドリフトでは、主にハムストリングス、中殿筋と大殿筋、脊柱起立筋が使用される。そして少しだけ僧帽筋が使われる。広背筋と大円筋にはアイソメトリック収縮が発生する程度で、筋肥大に必要な損傷を与える種目としてデッドリフトは適切ではない。
デッドリフト系種目は大きな筋肉を使って動作するので重い重量を扱うことができが、ヒップヒンジが習得できていない状態で高重量を扱うと脊椎や腰椎に大きな負担がかかるので、ヒップヒンジを習得してからゆっくりと重量を挙げていこう。
ヒップヒンジ習得ドリルは文章よりも映像で見た方が分かりやすく、かつ調べれば出てくるのでここでは詳しく説明しない。
スモウデッドリフトとコンベンショナルデッドリフト
ここからは代表的なヒップヒンジ種目の違いを解説する。まずはスモウデッドリフトとコンベンショナルデッドリフトでの、筋肉の活動の違いを筋電図で比較した実験を参照して、両者の違いを考察する。
スモウデッドリフトとコンベンショナルデッドリフトでの、筋肉の活動の違いを、筋電図で比較した実験がある。被験者は13名で、大学にてフットボールを行っており、スモウデッドリフトとコンベンショナルデッドをトレーニングプログラムに取り入れている。年齢は20.1±1.3歳、体重は102.8±16.1㎏、身長は186.6±7.5㎝であった。
結果として、スモウデッドリフトの方が外側広筋、内側広筋、の活動が増加した。コンベンショナルデッドの方が腓腹筋内側頭の活動が増加した。しかし、その他の筋肉の活動に有意差は見られなかった。この研究では、デッドリフトでのベルトの有無による筋活動の違いも調査された。ベルトを着けると腹直筋の活動が、ベルトなしでは外腹斜筋の活動が増加することが分かったが、その他筋肉に有意差は見られなかった。
この研究だけ見ると、スモウデッドリフトとコンベンショナルデッドにおいて、ハムストリング等のデッドリフトで鍛えたい筋肉の活動に違いはなさそうだ。この研究は、被験者の身長が比較的高いため、身長が低い人でも同様の結果が得られるのか追加調査が期待される。というのも、パワーリフティングにおけるスモウデッドリフトは脚が短い人にとって適したフォームであるからだ。
活動に有意差があった骨格筋が興味深い。スモウデッドリフトは、コンベンショナルデッドリフトよりも膝関節の伸展の可動域が広くなる。このことから、スモウデッドリフトでは外側広筋と内側広筋の活動が高まることが理解できる。一方でコンベンショナルデッドリフトは、スモウデッドリフトよりスタートポジションにおいて股関節の位置が高く、膝関節の伸展動作が少なくなり、垂直に立ち上がる動作の多くを股関節の伸展で行う。
また、下の図を見るとわかるが、コンベンショナルデッドリフトの方が、股関節とバーベルの距離が遠くなっており、モーメントアームがスモウデッドリフトより大きくなるという筋肥大においてのメリットがある。一方で、モーメントアームが大きくなることで、股関節及び脊柱への負荷は、スモウデッドリフトより大きくなる。しかしスモウデッドリフトはモーメントアームが短い代わりに重量を持つことができ、重量という形で股関節と脊柱に負荷をかけるため、両方の種目での股関節と脊柱にかかる負荷はほぼ同じになると考えられる。
https://www.powerliftingtowin.com/powerlifting-technique-deadlift-form/より引用。
筆者の「筋肥大のためのスクワットを解説。」でも触れたが、スクワットとデッドリフトはつながっている。スモウデッドリフトはコンベンショナルデッドリフトよりもスクワットの割合が大きくなり、パーシャルスクワットとヒップヒンジが連続した動作といえる。
筋肥大という観点からは、負荷は重量ではなくモーメントアームも利用して上げていく方が怪我が少なくなるので、ハムストリングスを狙うためにデッドリフトを行う場合はコンベンショナルデッドリフトの方が良い。脚全体を狙う目的や、パワーリフティング目的ならスモウデッドリフトの方が良いかもしれない。
コンベンショナルデッドリフトとスティッフレッグデッドリフト
スティッフレッグデッドリフトは、デッドリフトと比較してさらにヒップヒンジ動作に集中できる種目といえる。
この研究では、コンベンショナルデッドリフトとスティッフレッグデッドリフトでの、大腿二頭筋、外側広筋、腰椎多裂筋(腰部の筋肉。脊柱起立筋の一種。脊柱の伸展に寄与。) 、前脛骨筋活動の違いを、筋電図で計測した。被験者は14名男性で、年齢は26.71±4.99歳、体重が88.42±12.39㎏、身長は177.71±8.86㎝で、少なくとも2年以上のトレーニング経験者であった。
結果として、ハムストリングの活動に有意差は見られなかった。しかし、外側広筋の活動には有意差が見られ、特にコンベンショナルデッドリフトのコンセントリック収縮のはじめに活動が増加した。
スティッフレッグデッドリフトは、デッドリフトより膝を伸ばした状態でトレーニングをするので、動作に占めるヒップヒンジの割合が大きくなり、大腿四頭筋の関与が少なくなる。コンベンショナルでも大腿四頭筋に入りやすいような場合はスティッフレッグデッドを使用する選択肢が出てくる。
ここまでで主なデッドリフト系種目を比較してきたが、デッドリフトは膝関節伸展とヒップヒンジ動作である股関節伸展動作の複合運動であり、スモウデッドリフト、コンベンショナルデッドリフト、スティッフレッグデッドリフトの順で動作に占めるヒップヒンジ動作の割合が大きくなることが分かる。この違いを理解したうえでヒップヒンジ動作の選択をすると良いだろう。筋肥大の観点から我々はヒップヒンジ動作でハムストリングス、殿筋群、脊柱起立筋を刺激したいからスモウデッドリフトは候補から外れるだろう。
侮れないバックエクステンション
ヒップヒンジ種目として意外と侮れない種目がバックエクステンションがある。バックエクステンションはデッドリフトをする前のウォームアップや、ストレッチ感覚で行うことが多いが、十分に独自性を持っており、筋肥大を発生させるポテンシャルを秘めている。
まずバックエクステンションの独自性としては、負荷の乗る範囲が異なり収縮ポジションで負荷があることである。デッドリフト系種目では収縮ポジションは重量を骨で受けているので、筋肉への負荷は少ない。
https://bonvecstrength.com/2014/03/11/right-linkwrong-link-back-extensions/より引用。
またバックエクステンションは可動域が大きく少ない重量で負荷を高めることができ、腰や脊柱への負担が少ない。ケガをしにくくオーバーロードができる点は、筋肥大においては優秀である。
バックエクステンションはパッドの位置を変えることで対象筋への刺激を微妙に変えることができる。例えばパッドを股関節付近にすると中殿筋と大殿筋をメインに、大腿骨にするとハムストリングスをメインに鍛えることができる。
上記の特徴はバックエクステンションの独自性である。バックエクステンションのデメリットとしては加重が難しいことだろうか。環境にもよるが、ダンベルやプレートを持って加重はできるが、重りを抱えずに動作をすると、動作の途中で重りが地面につき肝心の可動域が制限されることになるのだ。
バックエクステンションは加重に難点があるが、他のヒップヒンジ種目はない独自性を持つので、十分に採用する価値がある。
ハムストリングストレーニング②カール系種目
ヒップヒンジ系種目とは異なる方法でハムストリングスを鍛える種目としてカール系種目がある。ここではカール系種目について解説する。
レッグカールマシンのバリエーション
ハムストリングスを鍛える種目として主にシーテッドレッグカール、ライイングレッグカール、スタンディングレッグカールがある。これらの大きな違いは股関節の位置であり、この違いからそれぞれの最大収縮位が変わる。
レッグカールのバリエーションと上腕二頭筋を鍛えるカールのバリエーションは似ている。インクラインカールとシーテッドレッグカール、ライイングレッグカールとバーベルカール、スタンディングレッグカールとスパイダーカール(マシンカール)のように、股関節の伸展具合と肩関節屈曲具合が似ている。
シーテッドレッグカール
シーテッドレッグカールとライイングレッグカールでの筋肥大の差について調査した研究では、20人の健康で、成年に達している被験者が、片脚ではシーテッドレッグカールを、もう片方の脚ではライイングレッグカールを行い、MRI検査にて筋肥大の差を計測した。被験者は、週2回5セットずつトレーニングを行い、レッグカールは70%1RMで10回行った。調査期間は12週間で、調査前と調査後のハムストリングの筋肉量を測定した。
結果として、ライイングレッグカールを行った脚よりも、シーテッドレッグカールを行った脚の方が、ハムストリングの中で二関節筋である半膜様筋、半腱様筋、大腿二頭筋長頭が有意に筋肥大していた。ハムストリングの中で唯一の単関節筋である大腿二頭筋短頭の筋肥大に有意差は見られなかった。
この研究とレッグカールの特性から、ハムストリングの筋肥大を目的とする場合、シーテッドレッグカールがライイングレッグカールよりも優れている可能性が示唆される。シーテッドレッグカールがより筋肥大効果が高かった理由は、ライイングレッグカールより最大負荷のかかる位置で筋肉が伸ばされており、多くの張力が発生したからであろう。
この研究だけを見るとシーテッドレッグカールが他のレッグカールよりも有効であると考えられるが、シーテッドレッグカールはハムストリングスの機能と矛盾する点がある。それは股関節の伸展が完全に制御されている点である。
レッグカールでハムストリングス全体を収縮する際には、膝関節屈曲がメインではあるが少しだけ股関節伸展がなされる必要がある。これはアームカールで上腕二頭筋を収縮させるときに、少しだけ肩関節も屈曲させるのと同じである。力こぶをつくる感覚であり、もし肘だけで動かそうとすると上腕筋だけで動作ができてしまう。
ライイングレッグカールとスタンディングレッグカールでは股関節がシーテッドレッグカールと比較してフリーなので、動作中に適度な股関節伸展動作ができる。この方がハムストリングス全体を動員する点では自然な動きになるといえる。
レッグカール系では膝関節周りのハムストリングスが、ヒップヒンジ系では股関節周りのハムストリングスが活動しやすいと示唆される。
この研究から、同じ骨格筋でも、大きく運動に関与する関節に近い部位の筋繊維の方が動員されやすいことが示唆される。この研究とシーテッドレッグカールの特徴から、シーテッドレッグカールはハムストリングスの中でも特に膝関節に近い部位、ハムストリングス遠位へ刺激を入れる際には有効であると思える。
以下は感覚的な話であるが、シーテッドレッグカールマシンはマシンによって合う合わないが激しいように思える。例えば負荷のかかり方から考えると大腿骨を上から固定するパッドがあった方が良いと思うが、これがないマシンが存在する。この場合お尻が動作中浮いてしまい高い負荷をハムストリングスに与えることができない。
https://www.kawai.jp/product/ykir-01/及びhttps://www.tsumura-f.co.jp/sports/training/st6022.htmlを基に編集。
大腿骨のパッドがあった方が良いと思うのだが…皆はどうだろうか。
ライイングレッグカール
ライイングレッグカールはシートにうつぶせに寝転んで行うカール種目で、シーテッドレッグカールよりも股関節屈曲度合いが少なくなっている。
ライイングレッグカールは上体をシートにべったりとつけるのではなく少し起こすとやりやすい。これはハムストリングスと脊柱起立筋が筋膜でつながっていることを理由する。
ライイングレッグカールに限らずレッグカールマシンを使う際はパッドを下腿の真ん中付近に設定すると、腓腹筋の関与を少なくしハムストリングスに刺激を集中させることができる。また収縮するときに足関節を底屈すると、腓腹筋が緩まりハムストリングスのみで収縮しやすくなる。
ライイングレッグカールの持つシーテッドレッグカールにはない特徴は、股関節が自由である点だろう。シーテッドレッグカールは座って行うので股関節伸展動作を動作中に入れることはできない。一方でライイングレッグカールは股関節がフリーなので股関節伸展動作を入れようと思えば入れることができる。これは後述するスタンディングレッグカールも持つ特徴である。筆者はこの股関節の自由度がハムストリングスを働かせるうえで重要であり、多くの人がシーテッドレッグカールよりもライイングレッグカールやスタンディングレッグカールの感覚が良い理由であると考えている。
ハムストリングスと上腕二頭筋は構造が似ている。上腕二頭筋と上腕筋を鍛え分ける方法として肩関節の動かし方がある。肘だけ動かすと上腕筋のみが働きやすく、力こぶをつくるようにカールすると上腕二頭筋が働きやすくなる。ハムストリングスも二関節筋であり、膝を曲げるというよりかは力こぶをつくる感覚でカールした方が動作しやすい。そしてこの動作をするには股関節が少し進展する必要があるのだ。
スタンディングレッグカール
スタンディングレッグカールは立位で行うレッグカールで、基本的に意識することはライイングレッグカールと同じである。
スタンディングレッグカールもライイングレッグカールも、股関節を連動させて運動できるという特徴があるが、この股関節の伸展を過度に行いすぎるとかえってハムストリングスの関与が少なくなることには注意しよう。これは上腕二頭筋を鍛えるときに過度に肩関節を屈曲させないことと同じである。また過度に股関節を進展させると腰椎への負担も大きくなるで注意である。というのも身体がまっすぐな状態からの股関節の伸展角度はたった15度程度しかないからだ。
特にこのスタンディングレッグカールの場合、ライイングレッグカールよりも股関節が動かしやすいので、パッドを動かす動作をほとんどお尻で行うことが可能である。しかも基本的にお尻の方がハムストリングスで行う動作よりも重い重量を扱えるので、重さを挙げることを意識しすぎるとお尻だけで動作を行うことになる。筆者がまさにそうであった。
お尻を鍛える目的であるならそれでよいが、ハムストリングスを狙う際は、丁寧に扱える重量を選択すること、力こぶつくるイメージで行うと良い。このイメージだと適度な股関節伸展が行える。
前述したお尻の動員は、ハムストリングスで収縮できなくなったときに、お尻の伸展で収縮を省略しネガティブのみ受けるというチーティングテクニックとして利用することもできる。ただ上級者向けである。
スタンディングレッグカールの欠点は多くの施設にマシンが存在しないことである。この欠点の補完として、レッグエクステンションでの代用が考えられる。レッグエクステンションマシンに逆に立ちスタンディングレッグカールを行うやり方で、本家には及ばないが十分にスタンディングレッグカールを行うことができる。
レッグエクステンションのシートが大腿骨の真ん中あたりに位置するとやりやすい。ただ大きなレッグエクステンションの場合脚の長さが足りない場合もあるので、環境があれば台などを活用すると良い。
まとめ
今回はハムストリグスについて解説してきた。ハムストリングスを鍛える上で知っておくべき基本的なことが理解できたはずだ。ハムストリングスがどのような筋肉で、どのような動きでどこが優先的に働くか、種目間でどのような違いがあるのかが理解できた。
ハムストリングスを鍛える上で、自身の目的に合わせて種目選定とフォーム設定ができるはずである。
ハムストリングスは他の筋肉と比較しても断裂する可能性が高い骨格筋である。過度にストレッチをかけたり、急に高出力をかけたりすると断裂しやすい。ケガだけには注意してトレーニングを行おう。
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