プラトーの要因と解決方法の考察

はじめに

プラトー(plateau)とは「平らな高地」を指すフランス語で、比喩的に「成長や変化が停滞し一定の水準で横ばいになる状態」を表現する言葉である。

筋肥大におけるプラトーとは、筋力トレーニングでのオーバーロード、特に重量オーバーロードが停滞することを表す。この記事ではプラトーを引き起こすと考えられる要因と解決方法を考察する。なおこの記事の筋肥大様式は筋原線維肥大に限定する。

この記事を読むことで、重量オーバーロードが停滞したヒトは停滞の原因を明らかにすることができる。また使用重量に限界があるヒトは重量オーバーロード以外の選択肢を増やすことができる。

要因

栄養不足

1.炭水化物

プラトーの要因として栄養不足が考えられる。特に炭水化物不足があげられる。なぜなら筋収縮にはATPが必要になるからだ。

炭水化物は筋肥大目的のトレーニングのエネルギー源として多く使用される。というのも筋肥大目的の場合無酸素解糖系が支配的になる6〜12回を採用するからだ。

増量期の場合は炭水化物メインにトータルカロリーを増やすことで炭水化物不足を防ごう。増量期は好きなものを食べる期間ではなくオーバーロードを追求する器官と捉える。体重×2g程度の動物性たんぱく質、トータルカロリーの20~30%の脂質は年中摂取するとして、残りのカロリーを炭水化物で賄いたい。なぜなら炭水化物以外の固定したルールで、アナボリックの材料は確保できているからだ。

トレーニング前後の炭水化物量を増やすことも炭水化物不足によるプラトー打破に貢献する。この方法は増量減量関係なく実施できるが特に減量期に効果的である。例えば4食摂取するとして、3食目と4食目に全体の60%の炭水化物を持ってくるようにすると、トレーニング前後だけは増量期と同じ量の炭水化物を摂取することができる。

この方法は食事を準備するときに炭水化物源の測り方を変えるだけでできるので、コスパの良い方法である。筆者は減量中は必ず行っている。こうすると減量期の使用重量の低下速度を下げられる。

2.ホルモン

マクロ栄養素に関しては炭水化物源の管理がプラトー打破に効果的である。マクロ栄養素だけでなくミクロ栄養素も管理することもプラトー打破に貢献する。マクロとミクロ栄養素をアナボリックホルモン最適化を目的に管理する。

こうすることでアナボリック>カタボリックの環境を整備し、刺激によって適切にアナボリック→筋力増加→重量オーバーロード→筋力増加…という流れをつくることができる。本来は筋肥大に値する刺激を対象筋に与えることができているのに、身体の環境がカタボリック有意なのでプラトーに陥っている場合に有効である。

具体的にはテストステロン、GH/IGF-1、インスリンの3つのホルモンを最適化させテイク。内因性のテストステロンとGH分泌量を高め、遊離テストステロン増加施策を実施し、肝臓の健康を保ちGHのIGF-1変換効率を正常化させる。有酸素や抗炎症施策を通じてインスリン感受性を高める。これらについては筆者は多くの記事を執筆しているので参照してほしい。

またミオスタチン抑制も重要である。なぜならカタボリック抑制という観点からアナボリック>カタボリック環境整備に貢献するからだ。

休養不足

1.骨格筋の疲労

ヒトの疲労には大きく骨格筋の疲労と神経系の疲労がある。前者は重量オーバーロードする体力がなく。後者では重量オーバーロードする指令が出せない。

例えばトレーニング前に過度な有酸素をするのは厳禁である。具体的には最大心拍数の70%以上の運動である。なぜなら無酸素解糖系を使用するからだ。また立ち仕事の多いヒトは1週間単位で慢性的な骨格筋の疲労は蓄積しトレーニングを最大パフォーマンスで始められない。

このような場合には、脚トレは休日に行ったり、仕事を変えるなんて言う大胆な案も考えられる。転職や新しいビジネスをつくるまでは脚は維持に努めて他の部位に特化するなんてのも良い。筆者は過去に慢性的に疲労が蓄積する環境にいたが、その時は身体のバルクアップはあきらめて基本種目の筋力維持のみに努めたことがある。筋肉量は落ちたが新しい環境を作成できたときの回復は遅くなかった。

ドラッグなんかも控えた方が良い。具体的にはアルコールやたばこ、過度な鉄とビタミンAの摂取などである。これらは肝臓を介して解毒されるが、その過程でいらない活性酸素を算出してしまう。このような状態では身体は回復(カタボリック)>アナボリックになるのでとても筋肥大どころではなくプラトーに陥る。

2.中枢神経疲労(CNS疲労)

いわゆる神経疲労と呼ばれるものもプラトーの要因として挙げられる。骨格筋の収縮は中枢神経→脊髄神経→運動神経(モーターユニット)→骨格筋、という流れで発生する。先に挙げた疲労は骨格筋が疲労しているので重量を挙げることができない。

中枢神経系が疲労している場合、たとえ骨格筋が疲労していたとしても、最大筋力を発揮させるために必要な程度の発火を起こすことができない。

中枢神経疲労は随意活性化率という指標で明確に定量化できるものであり実在する。中枢神経疲労に関してはワンハンド種目を行ったときに実感できる。筆者はワンハンドリアレイズをした時に、片方は12回できるがもう片方は8~9回くらいしかできないという状況に陥る。骨格筋の疲労や新派う機能の低下などもあるが、片方のトレーニングで中枢神経系が疲労したことも原因である。

またハードに脚トレをした後に腕のトレーニングをする時、腕トレの時よりも使用重量が落ちるはずだ。筆者は一時期全身法を実践しており、脚トレ後のチンアップの使用重量が一切伸びないことがあった。これも中枢神経疲労によるものと考えられる。

3.解決方法

最も良い解決方法は睡眠の質と量を確保することである。骨格筋の疲労はストレッチやマッサージガンを行うことや、軽い運動で対象筋に血液を流すことなども回復方法として考えられるが、中枢神経系は脳の疲労なので睡眠ぐらいしか回復方法がないのだ。

睡眠に関してはこの記事を参考にしてほしい。量と質を高める手助けをしてくれる。

またトレーニング期間を開けるのも良い方法である。というのも中枢神経疲労は48~72時間で回復するからだ。

環境要因(トレーニング)

休養と栄養の管理がずさんなヒトがそれらを徹底するとある程度の重量オーバーロードが見込まれるはずだ。

例えば筆者の大腿四頭筋のメイン種目はレッグエクステンションであるが、マクロ栄養素の管理くらいしかしていなかったときは70㎏10回でテンポもポジティブ1秒ネガティブ2から3秒とかだったが、ホルモンの最適化のためにミクロ栄養素を徹底したり新たな環境を作成することで、79.5㎏8回ポジティブ1秒ネガティブ4秒までオーバーロード出来た。

休養と栄養を徹底してもプラトーは発生する。ここからさらなるオーバーロードを達成するためにはトレーニングプログラムを工夫する必要が出てくる。トレーニングプログラムの前にプラトーを創り出している環境要因について示す。

1.ケガ、骨格

具体的にはヘルニア持ちとか、腰痛持ちとかのヒトである。過去の協議を背景にする人が多い。このような人が股関節や骨盤を動かす種目でオーバーロードを達成しようとしても痛みが先行して追い込むことができない。個人に対して種目があっていないのでプラトーが発生しているパターンである。

次に骨格である。例えば骨盤前傾している人は後ろにケツを突き出しながらしゃがむのでスクワットで大腿四頭筋を狙いにくいとか、後傾している人膝関節を折りながらしゃがむのでデッドリフトで大腿四頭筋を使いやすいとかである。

例えば筆者の場合は肩関節の柔軟性が低く、ショルダープレスやフレンチプレスといった上腕骨を頭の横から後ろに固定して重量を扱う種目が苦手である。追い込む前に痛みが先行して採用できない。

ケガによるプラトー打破の最善策はケガの要因を取り除くことである。具体的な案は筆者の手には負えないので医者やその道の専門家に聞いてほしい。

次に考えられる案は、「自分が最もケガ無く追い込める種目」を選ぶことである。

筆者の大腿四頭筋メイン種目がレッグエクステンションなのはこれが理由である。筆者は骨盤が過度に前傾しており、ハックスクワットやレッグプレスのように身体全身を使うヘビーコンパウンド種目では追い込む前に腰が沿って痛くなってしまう。

大腿四頭筋の作用は脛を前に出すことなので、その条件似合う種目なら別にプレス系種目に拘らなくても良いのだ。同じようにフレンチプレスが苦手な人はプレスダウンのやり方次第で長頭に刺激を入れることはできるし、デッドリフトが苦手ならスティッフレッグデッドリフトでも良いのだ。

2.重りがない

これはジムのポテンシャル不足が原因である。具体的にはダンベルが30㎏までしかないとか、レッグエクステンションのスタックが足りないとかである。

対策としてはジムを変えることが手っ取り早い。24時間ジムに契約していて自家用車を持っているならこれによるプラトーは発生しないだろう。

都市部に住む人なら問題ないが、問題は近く(5㎞圏内)にジムが1つしかない場合である。地方の田舎ならこのような事態が発生する。実際筆者はジムなんてどこでもいいと思っているヒトで、生活水準を下げるために田舎に住むことが多いが、ダンベル30㎏しかないことなんてざらである。過去にはフルスタック40㎏のレッグエクステンションを見たことがある。「なにこれ?」と思ったこと覚えている。

このような場合は後述するテクニックを利用できる。重量以外のオーバーロードを駆使するのだ。

プラトー打破トレーニング

基本的には重量オーバーロードなのだが、休養も栄養も今できる最善を尽くして、環境も今できる最善を尽くした。それでもプラトーに陥った場合に以下のプログラムを実施する。

1.セット数オーバーロード

複数の研究でトレーニングボリュームの増加と筋肥大には強い相関関係が存在することは多くのヒトが知っているだろう。これは筋肥大に有効なセット数という条件付きである。

例えばいつもメインセット2セットで、150㎏10回、90㎏8~9回のスクワットをしていたとする。メインセットの重量が全然更新できないとき、155㎏10回を達成するよりも、3セット目に90㎏7回達成するほうが良いである。そしてこれでも前回よりもオーバーロードは達成できている。

このように1セット目の使用重量は挙げないが、セット数を増やすことでとレーニンgボリュームを増やす手段が有効である。筆者も含めて重量オーバーロードに拘りを持つヒトは、どうしても「重量更新こそが唯一のオーバーロード!」と考えてしまう癖があり、セット数を少なくしがちなので、そのようなトレーニングをしてプラトーが発生したらまずトレーニングボリュームを増やす。

メインセットが2セットの場合は4セットにしてみるなど。セット数オーバーロードにも限界があることは注意である。

具体的には1セッション当たりのセット数と筋肥大に関しては、6セット付近までは相関関係はあるが、6セットから10セットまでは効果が変わらない。

セット数さえ増やせばよいと思って1セッション当たり10セットも20セットもやr内容にする。1セッションでこれほどのセットをこなすことは、ほとんどの人にとって活性酸素を無駄に増やし回復を遅くさせているだけになる。

2.頻度を落とす

セット数オーバーロードと関係するが、あえてトレーニング頻度を落とすということもプラトー打破に貢献する。これは中枢神経系の疲労を次のセッションまでに完全に抜いておくということとが理由になる。

具体的には重量オーバーロードのプラトーに陥った部位は週1回の頻度に落とす。これにより中枢神経疲労を完全に抜き、次のセッションで100%の出力を出せるようにする。

頻度を増やすことは理想的であるが現実的ではない理由は以下。

①中枢神経疲労:

筋肥大のトリガーに値する出力を高頻度で毎回達成することは困難。オーバーロードの原則より前回より弱い刺激は筋肥大には意味がない。

②1年で獲得できる筋肉量は1g程度:

真剣に筋肥大トレーニングを5年以上しているヒトの場合。そもそも獲得できる筋肉量が少ないので速度を急ぐよりゆっくりだが確実にオーバーロードしていく方が現実的。高頻度が実現できても変わる筋肉量は100~500g程度。費用対効果が低いように思える。費用に効果が追い付くのはボディビルで金を稼ぐシステムが創れているヒトくらいである。

3.レスト&ドロップ

筆者おすすめの方法。この方法の良いところは、「本来よりも軽い重量で同等の筋肥大誘発レップを得られる点」にある。まず1セットを限界まで行う。そのあと30秒以下の短いレストをとり限界まで行う。詳しくはこの記事この記事を読んでほしい。

4.可動域制限

可動域を制限するというもの、カム式以外の種目に利用できる。

45度から135度に可動域を制限して行う。これは対象筋のみに刺激を入れるためと、レップ間に対象筋が休まる余地をなくすことである。よくスクワットやベンチプレスなどで、複数回レップをこなした後にトップで数秒止まってから1、2レップ行う人がいる。こも良いのだが厳密にはこれは1セット+レストポーズによる2セットである。最後の数回は1セットの回数に含めてはいけない。

可動域を先の範囲に制限することで、そうでないやり方よりも2回ほど回数が落ちるはずだ。それが本来の自身のポテンシャルで、その条件であれば少し重量オーバーロード出来る余地があるはずだ。

まとめ

本記事では筋肥大における「プラトー」の原因とその打破法について、栄養・ホルモン・休養・トレーニング環境・プログラムといった多角的な観点から詳細に解説した。

最後に内容をまとめる。

  • 炭水化物不足は筋出力低下を招く。
  • ホルモン最適化で筋肥大環境を整備。
  • 睡眠不足が中枢神経疲労を招く。
  • ケガや骨格による種目の制限に注意。
  • 重量不足はセット数で代替。

この記事の内容を理解することで、筋肥大の停滞を打破し、再び使用重量や筋肉量を伸ばすことができる。

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