恒常性を基に筋肥大を解説。

はじめに

この記事では、恒常性を基に筋肥大について解説する。筋肥大を達成するうえで、漸進的オーバーロードは必ず必要になる。なぜなら、筋肥大という現象がヒトの恒常性を保つための適応能力であるからだ。

この記事では、筋肥大という現象が恒常性の一種であることを解説していく。この記事を読むことで、筋肥大のため漸進的オーバーロードが必要であることが理解できる。

恒常性を基に筋肥大を解説

恒常性と筋肥大の関係

ヒトの身体の生理学的現象は、身体の恒常性の維持のために発生する。なぜなら継続的に生きるためであり、恒常性が破壊された状態が続くと死ぬからだ。

恒常性とは、身体が生存し正しく機能するために必要な身体のシステムのバランスが取れている状態をいい、恒常性を通じて体内レベルが体内外の変化に対応して正常なレベルに維持される。

https://byjus.com/biology/homeostasis/より引用。①外部環境の変化に伴う恒常性の一時的破壊→②受容器の変化の受信→③コントロールセンターへのシグナル→④ストレス応答、といったサイクルを通して環境適応という形で身体の恒常性は維持される。

指をナイフで切った時を想像する。ナイフによる出血は、恒常性サイクルの中の外部環境の変化に伴う恒常性の一時的破壊である。出血が回復しないとヒトは出血多量で死ぬ。出血がヒトの身体に伝達され、出血を止めるために血小板が患部でつくられる。出血時に細菌が侵入した場合は、炎症反応が発生し、免疫機能が低下することを防止する。

以上のサイクルで切り傷での出血が止まりいつもの生活を営むことができる。恒常性の回復である。

上記の出血の際の反応はまさに恒常性サイクルであり、ヒトの持つ生理学的機能はすべてこの側面を持つ。そして筋肥大もこれに従う。

筋肥大は身体の持つ環境適応能力の一つで、ヒトは特定の恒常性の一時的破壊を、既存の筋繊維を太くする(=筋原線維肥大)若しくは細胞膜を大きくする(=筋形質肥大)によって克服する。ヒトは身体の外部環境の変化による恒常性の破壊に対して、筋肥大という形で反応するのだ。

筋肥大のためのトレーニングの持つ必然

筋肥大のためのトレーニングが持つ必然は、恒常性の一時的破壊である。これこそが筋肥大のトリガーである。我々は筋肥大のために、自分の意志でトレーニングを通して恒常性を一時的に破壊しないといけない。

恒常性サイクルと筋肥大というヒトの能力から、筋肥大を目的とする筋力トレーニングは恒常性を一時的に破壊するための行動である。恒常性サイクルを基に筋肥大の一連の流れを示すと以下のようになる。

①筋力トレーニングにより恒常性が破壊される。(=筋肥大のトリガー)

②恒常性破壊を身体の受容器が受信する。

③体内がシグナルを感知し、ホルモン分泌が変化する。

④筋肥大によって恒常性の一時的破壊を克服。(=環境適応)

筋力トレーニングを通じて恒常性の一時的破壊はどのようにして起こすか。筋肥大がストレス応答に対する環境適応能力であることを考えると、前回のトレーニングよりも1%でもいいから過負荷を達成することで恒常性が破壊されることになる。筋力トレーニングで恒常性を破壊できたなら、身体が刺激を受信しホルモンの分泌を変化させる。そして休養を取り栄養を摂取することで筋肥大が達成される。

また筋肥大の持つ環境適応という特徴から、筋肥大を継続して達成するためには、筋力トレーニングの負荷は漸進的に高くなる必要がある。なぜならヒトは100㎏の重りを挙げることができないからそれを筋原線維肥大という形で挙げられるようにするからだ。またトレーニング中の代謝物の蓄積やパンプに筋形質の容量が耐えられないので、筋形質肥大という形でそれを克服するからだ。

100kgの重りを10回挙げることができたのなら、同じ重さを同じ回数扱ったとしても筋肥大する必要はなく、筋肥大を達成するためには次は101㎏に挑戦したり、11回に挑戦する必要がある。この原則を漸進的オーバーロードという。

筋肥大というヒトの持つ環境適応能力を引き出すには、筋力トレーニングで一時的に恒常性を破壊しなければならず、恒常性破壊には継続的なオーバーロードが達成されないといけない。これは筋肥大のためのトレーニングの共通事項である。

筋肥大のためのトレーニング方法

筋肥大のためのトレーニング方法

筋肥大がヒトの持つ生理学的機能の一つであることが理解できた。そして筋トレではオーバーロードの達成が必須ということも理解できた。これは生理学的真理であり、ヒトがヒトである以上変わることはない。

漸進的オーバーロードは共通項だが、それを実現するトレーニング方法に関しては異なり、優位性を議論する分野ではない。なぜなら手段が異なるだけでオーバーロードを達成するという目的は同じであるからだ。

例えばメカニカルテンションを重視したトレーニングであっても、メタボリックストレスを重視したトレーニング、マスキュラーダメージを重視したトレーニングであっても、再現性高く漸進的オーバーロードを実現できているのであれば、全て正しいトレーニング方法である。他にも頻度で攻めたり、ヘビーデューティで攻めたりするトレーニング方法でも同じである。それらは筋肥大の特徴に多少違いはあれど、トレーニングとしては正解である。

筋トレは登山や数学に似ている。登山は目的である登頂を複数のルートから目指すことができる。数学では一つの答の導き方は複数ある。筋肥大を達成しているヒトはそれぞれ独自のトレーニング方法を持っている。「筋肥大とはヒトの持つ環境適応能力の一つで、筋力トレーニングでは一時的恒常性破壊を起こすことが目的」という原則は変わらないが、その原則を導くトレーニング方法は複数あるのだ。

https://trickytour.jp/fuji/column/beginners.htmlより引用。富士山の登山ルートには複数の登山ルートがあり、登頂速度、初心者向け、景観等の特徴がそれぞれのルートに存在するが、最終的にはどのルートも頂上に到達する。

以上のことから、漸進的オーバーロードを達成できるならトレーニング方法は不問である。

トレーニング方法について分析するときに、見るべきところは奇抜さではなく、再現性高く漸進的オーバーロード出来るかどうかという点である。様々なトレーニング方法が存在するが、原則さえ遵守しているなら好きなものを選べばよい。

再現性高く漸進的オーバーロード出来るかどうかを判断する基準の一つとして、ケガしにくいということがある。なぜならオーバーロードを達成するほどケガの可能性は高くなり、ケガによりオーバーロードが中止するからだ。

また特定のトレーニング方法は結果が出るまでに時間がかかるので、これだと決めたトレーニング方法は最低でも半年以上は続けてほしい。登山でも同じで、Aルートで5合目まで登ってBルートに移動したり、もう一度Aルートに戻ったりすると頂上にはたどり着かない。

論文で自分の好きなトレーニング方法や種目の効果がないとされていても、被検者とあなたの環境や性質、骨格は違うし、結果などはいつも同じではない。論文が参考文献として有効な理由は、論文の構造が再現性を担保するものになっているからで、論文自体に理由はない。また論文はやろうと思えば研究や実験の仕方を恣意的に操作することもできるし、論文作成の期間や費用、環境が整っていないない場合はなおさらである。つまり論文は参考にする資料の中でマシなものにすぎない。自分に合うと思いそれで怪我無く筋肥大できていたら、その種目と方法はあなたにとっては正解である。

このブログではトレーニングの目的を筋肥大、つまり漸進的オーバーロードとし、「運動する多くの筋繊維に、ケガ無く、メカニカルテンションを与える」という方法を基本として目的を達成する。

まとめ

今回は、恒常性を基に筋肥大について解説した。

恒常性とは身体の安定状態を保つ仕組みであり、筋力トレーニングによって一時的に恒常性が破壊されることが、筋肥大のトリガーとなる。身体はこの破壊に適応するために筋肉を太くし、恒常性を回復させようとする。したがって、トレーニングでは毎回少しずつ負荷を高める「漸進的オーバーロード」が不可欠である。また、筋肥大を達成する手段であるトレーニング方法は多様であるが、再現性が高く漸進的オーバーロードができていれば正解である。

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