筋肥大におけるマグネシウムの作用、摂取量、タイミング

はじめに

この記事では、マグネシウムについて解説する。マグネシウムはヒトの生命活動に必要不可欠な栄養素である。なぜなら、300以上の生命活動の活性酵素としての役割を持つからである。

この記事では、マグネシウムの持つ作用を解説し、その作用が健康及び筋肥大にどう影響するかを解説する。

作用

エネルギー産出

マグネシウムが重要である理由は、それがエネルギー産出を活性化させるからだ。人

ヒトの使用するエネルギーは、ATPがADPに変換されるときに産出される。マグネシウムイオンは、ATP生成と消費におけるリン酸基移転反応の触媒として機能する。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/swsj/64/4/64_4_202/_pdfより引用。

この役割から、いかにマグネシウムが重要であるかが分かる。なぜなら筋肥大やテストステロン合成を含む、全ての生命活動にはATPによるエネルギー産出が必須だからだ。

マグネシウムはエネルギー産出を活性させるため、筋肥大に関わらず生命活動を円滑化させるうえで必須の栄養素である。

筋弛緩

マグネシウムは、筋弛緩作用を持つ。なぜなら、マグネシウムはカルシウムチャネルをブロックするからだ。

https://energizehealth.ca/about/careers/south-opportunities/16-blog/25-muscle-soreness-and-magnesium-deficiency.htmlより引用。

マグネシウムの持つ筋弛緩作用は、例えばハードにトレーニングをした後に有効活用できる。なぜならトレーニング後に対象筋が攣るのはカルシウムとマグネシウムが消費されたからである。トレーニング後にマグネシウムを摂取することでトレーニング後のケアを促進できる。

また就寝前にマグネシウムを摂取することも有効である。なぜなら、筋弛緩作用が入眠を助けるからである。ヒトは睡眠時に移行するときに副交感神経優位になる。副交感神経系は交感神経系と比較して血圧や心拍数が下がり、筋収縮は進む。ナイトルーティンは副交感神経を優位にさせるために行うが、マグネシウムはそれを補助する。

以上のことから、マグネシウムは筋弛緩作用を持ち、それは入眠環境の整備とトレーニング後のケアに利用することができる。

テストステロン生合成

マグネシウムを摂取することで、テストステロン生合成が促進されるといわれている。なぜなら、マグネシウムがテストステロン生合成に関わる酵素を活性化させるからだ。

https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89より筆者編集。

1ラット実験であるが、マグネシウムが3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素と17β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素を有意に活性化させ、血清テストステロンが増加したことが報告されている。

ラット実験なので、ヒトを対象にした場合に同様の結果が出るかはわからないが、マグネシウムの主作用が酵素活性であることを考えると、テストステロン生合成に関わる酵素が活性化すると考えることは見当違いではない。

以上のことから、マグネシウム摂取がテストステロン生合成を促進するといわれている。

コレステロール生合成調整

マグネシウムは脂質代謝に関する酵素のも活性化させる。

https://www.researchgate.net/figure/Fig-1-Cholesterol-biosynthesis-pathway-HMG-CoA-reductase-inhibition-by-statins_fig1_266570858より引用。

コレステロール生合成の律速因子はHMG-CoAである。これがHMG-CoA還元酵素を介してメバロン酸に変換される。スタチンはHMG-CoA還元酵素阻害薬で、脂質異常症や動脈硬化抑制目的で処方される。

23マグネシウムはスタチンと似た作用を持ち、コレステロールを含む脂質の代謝を調整する。

以上のことから、マグネシウムはコレステロールの生合成を抑制する形に働く。この点だけ見ると、テストステロン生合成を鈍化させそうだが、他の作用やその他の脂質代謝への効果を考えると、メリットの方が上回る。

摂取量と加工方法

摂取量とタイミング

マグネシウムを摂取するタイミングは目的によるが、ハードなトレーニングをした後はおすすめである。4なぜならトレーニングによってマグネシウムイオンの排泄が増加するからだ。マグネシウム摂取がトレーニング後のケアを促進する。

また筋弛緩作用があるため、睡眠前に摂取すると、副交感神経優位の状況を作りやすく、睡眠の質向上に寄与する。

また亜鉛やビタミンDといった、テストステロン生合成に寄与する栄養素と同時に摂取すると良い。なぜならマグネシウムがそれらの作用発揮を促進させるからだ。

以上のことから、目的に応じて必要なマグネシウム摂取量は異なる。筆者は一日450~600㎎程度の摂取が多くの人にとって適していると考えている。ただ亜鉛を100㎎以上摂取する人や、ビタミンDを10000IU以上摂取するような人であれば、それらの効果を発揮させるためにより多くのマグネシウムが必要になるため、追加のマグネシウム摂取が必要になるだろう。

加工方法

マグネシウム摂取の方法として、サプリメントを利用する場合には注意が必要である。なぜなら、ミネラルは加工方法によって吸収率が異なるからだ。

ミネラルは小腸で吸収されることで、元素の形で作用を発揮する。ただサプリメントの場合元素のまま摂取することはできないので、加工を施し化合物という形で摂取される。ミネラル化合物ではキレート加工という方法が採用されている。

マグネシウムや亜鉛、銅といったサプリメントメーカーの裏の栄養成分表を見てみると、アミノ酸マグネシウム、クエン酸マグネシウムといったように、異なる加工方法が施されていることが分かる。このように加工された化合物が、摂取後元素の形に分解されるが、加工方法によって分解速度が異なり、吸収率に変化が現れる。

以上のことから、マグネシウムをサプリメントで摂取する場合、加工方法に違いに注意する必要がある。そして、筆者はサプリメントで摂取する場合はグリシン酸若しくはビスグリシン酸マグネシウムの摂取をお勧めする。なぜなら他の加工方法と比較して吸収率が高いからだ。

例えば酸化マグネシウムの吸収率は4%と報告されている。マグネシウムをサプリメントで100㎎摂取したとしても、4㎎しか利用できない。これではサプリメントでマグネシウムを補えているとは言えない。以下に代表的なマグネシウム化合物と吸収率の違いを示す。

酸化マグネシウム:4%

硫酸マグネシウム:10~15%

クエン酸マグネシウム:30%

グリシン酸(ビスグリシン酸)マグネシウム:80%

以上のことから、グリシン酸若しくはビスグリシン酸マグネシウム(magnesium glycinate, or magnesium bisglycinate)の摂取をお勧めする。

ちなみにキレート加工による独自の効果も発生する。例えば酸化マグネシウムは下剤として利用することができる。グリシンはグルタチオンの前駆体としてそれの合成に使うこともできる。

まとめ

今回はマグネシウムの作用と摂取について解説した。

マグネシウムは300以上の生命活動を支える酵素を活性化する必須栄養素であり、ATP産出の活性化、筋弛緩作用、テストステロン生合成促進などの作用を通して、筋肥大と健康に寄与する。摂取量は一日450~600㎎を基準として、目的に応じて調整する。サプリメントで摂取する場合は、吸収率の高いグリシン酸マグネシウム若しくはビスグリシン酸マグネシウムを選ぶと良い。

参考文献

  1. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23441478/ ↩︎
  2. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10136538/ ↩︎
  3. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15466951/ ↩︎
  4. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/3558215/ ↩︎

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