【筋肥大】筋腱複合体と筋トレへの応用を解説|弾性力を消失せよ

このような悩みを持ってていないだろうか。

・ボトムをバウンドさせると重い重量を扱えるけど筋肉への効きは悪い。

・ボディビルダーのトレーニングテンポに理由はあるのかな。

・負荷を最大限対象筋にかけたい。

これらの悩みは以下に示す筋腱複合体を理解することで解決できる。

この記事の内容は以下のとおりである。

1.筋腱複合体について解説。

2.筋腱複合体の筋トレへの応用を解説。

筋腱複合体の理解は筋力トレーニングにおいて重要だ。なぜなら力発揮は腱と筋収縮の和だからだ。100㎏を腱の力90%で扱うよりも、70㎏を筋収縮9割で扱う方が筋肥大効果は高い。

筋肥大の最大化には、トレーニングで狙った部位の筋繊維すべて負荷をかけていくことが重要になる。筋腱複合体の理解はサイズの原理と筋肥大誘発レップと共にこれに貢献する。

以下では筋腱複合体を解説し、それをどうトレーニングに応用するかまで解説する。

この記事を書いている筆者は筋トレを5年間行っており、ボディビルダーを目指し研究と実践を繰り返している筋トレオタクである。またフィットネスクラブでの勤務経験があり、初心者のシェイプアップに成功した経験もある。このような筆者が筋腱複合体について解決しよう。

筋腱複合体とは何か

弾性力

https://sports-science.ajinomoto.co.jp/thm07_joint-tendon/より引用。

弾性力とは、「変形した物質体がその変形の原因となった力を取り除くと、元の形や大きさに戻る能力」と定義される。腱は弾性力を持ち、外部の負荷を蓄積し伸ばされたり縮んだりすると強い力で元の形に戻ろうとする。

腱が元の位置まで戻る際に発揮される力が弾性力で、弾性力にはフックの法則が適応される。

https://www.bio-meca.com/en/glomeca-3-hookes-law/より引用。フックの法則(F=-kx)を表した図。フックの法則とは、ばねの伸びは加えた力に比例するという法則である。 (F:弾性力の大きさ、k:ばね定数、x:ばねの変位)

ヒトの運動は骨格筋の収縮だけでなく腱の弾性力も共同して達成される。この骨格筋と腱の性質を合わせて筋腱複合作用といい、骨格筋と腱を一つの構造とみる概念を筋腱複合体という。

弾性力の効果

パワーリフティングやアームレスリングが目的なら腱の弾性力は大きな効果を発揮する。なぜならこれらの目的は絶対的重量の向上だからだ。目的達成に力発揮の性質は問われない。また腱の弾性力が運動に占める割合を高くすることは骨格筋の疲労を少なくすることにもつながる。

例えば立位の状態からそのままジャンプするよりも、立位から深くしゃがみこんでその勢いのままジャンプする方が高く飛べる。これは加速度で伸ばされた腱が元に戻る力が、筋収縮に追加して発揮されたからだ。

例えばアームレスラーは動作の最初に上腕屈筋群の筋肉を収縮させきってから、腱の弾性力を利用して相手を倒す。アームレスラーの動作中の上腕屈筋群は常に等尺性収縮している。こうすることで相手の力が自分の腱を引き延ばし、骨格筋が発生させるよりも強い力を弾性力で発揮できる。

このような腱の効果は、絶対的な重量向上を目指すパワーリフティングやアームレスリングといった競技で有利に働く。以上のことから、絶対的な重量向上を目指す場合腱の弾性力は大きな効果を発揮する。

筋力トレーニングへの応用


弾性力の消失

筋肥大が目的なら腱の弾性力は可能な限り消失させる。なぜなら筋肥大には多くの筋繊維を運動に動員させたいからだ。

腱の弾性力を使ってあげた負荷は筋繊維で仕事をせずに扱った負荷なので、筋肥大効果は薄い。腱の力80%で挙げた100㎏よりも骨格筋の力80%で挙げた60㎏の方が、骨格筋にかかる負荷は高高い。

たまに「そんな重量扱ってそんな筋量なの?」と思うことがある。この疑問は相手が弾性力で重りを挙げている(若しくは弾性力を限りなく少なくしている)から発生する。

そもそも筋肥大で高めて言うことは仕事率であり、絶対的重量は仕事率の一要素でしかない。弾性力だけでなく可動域や身長などで同じ重さでも対象筋への負荷は変わるので、筋肥大に置いて重量のこだわる必要はない。

仕事率に関してはこちらの記事で詳しく解説しているので気になるヒトは読んでほしい。

以上のことから、筋肥大には腱の弾性力は消失させる。

ネガティブ局面を止めるように行わない

腱の弾性力を消失する方法の一つとして、ネガティブ局面を止めるように行わないことが挙げられる。なぜなら骨格筋の等尺性収縮が腱を引き伸ばす要因になるからだ。

フックの法則を思い出してほしい。腱はフックの法則に従い、外部の負荷によって引き伸ばされると元に戻る性質がある。

腱は不随意的構造物で形の変化が外部の負荷に依存している。一方で筋肉は随意的構造物である。フックの法則と腱の構造的特徴から、ネガティブ局面での止める動作(骨格筋の等尺性収縮)は腱にとって外部の負荷となる。そして腱が引き伸ばされ腱の運動に占める割合が高くなる。逆にボトムポジションで腱と骨格筋が同時に伸展すると、腱の伸展の程度が小さくなり腱の弾性力は少なくなる。

以上のことから、ネガティブ局面を止めるように行わない方が良い。感覚的に言うとエキセントリック収縮でグッ、グッと所々で止めない。

以下に世界的アームレスラーであるDevon Larrattの腕トレの一部と、トップボディビルダーのフィルヒースの上腕屈筋群のトレーニング動画を示す。両者はトレーニングの目的が異なるので、同じ腕トレでも降ろし方や使う筋肉、テンポなどが異なる。

https://www.youtube.com/watch?v=dWpiJdIlzRgより引用。

https://www.youtube.com/watch?v=6PjaZHlQ_XIより引用。

ボトムとトップで0.5~0.5秒静止する

ボトムとトップで0.3~0.5秒動作を止めることも有効だ。なぜならこうすることでトップとボトムで発生する加速度を減少させられるからだ。

例えばベンチプレスのボトムで重りをバウンドさせると、身体の腱が強く引き延ばされ高い弾性力が発揮される。一方ボトムで重りの動きを止めてから重りを挙げると、ボトムで引き伸ばされた腱が元の位置に戻り腱の弾性力が消失する。

こうして運動の多くを骨格筋の収縮で行うことになる。発揮される力は後者の方が前者よりも小さいが、筋繊維の動員数は後者の方が多くなる。

以上のことから、ボトムとトップで0.3秒~0.5秒止めることが有効だ。

トップビルダーの一人、Nick Walker のトレーニングフォームは、絶妙なネガティブ局面の耐え方と、ボトムとトップの徹底が行われているので参考になる。

https://www.youtube.com/watch?v=OjRIVlSj6YMより引用。IFBBプロボディビルダーのNick Walkerのネガティブ局面はこの絶妙なエキセントリック収縮であり、参考になる。

最後に

この記事では筋腱複合体と筋トレへの応用を解説した。

筋力発揮は筋肉の収縮と腱の弾性力の合計で、同じ重量でも腱の弾性力に頼る割合が高ければ筋繊維への負荷が減り、筋肥大効果は低下する。パワーリフティングやアームレスリング等絶対的使用重量を目的とする場合は、腱の弾性力が有利に働く。

筋肥大が目的なら腱の弾性力を可能な限り排除し、筋肉に直接負荷をかける。その方法としてネガティブ局面を止めるように行わず、動作のトップとボトムで0.3〜0.5秒静止することが有効だ。こうすることで弾性力を抑え筋繊維の動員を多くできる。目的に応じて腱の力を使い分けることが効果的なトレーニングに繋がる。

この記事が読者の筋トレに貢献したならうれしい。

多くの筋繊維に負荷をかけることには、筋腱複合体に加えてサイズの原理と筋肥大誘発レップの理解が大きく貢献する。

サイズの原理についてはこちら、筋肥大誘発レップに関してはこちらで解説しているので気になったヒトは参照してほしい。

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