この記事では浸透圧による体液調整と、それが筋肥大に与える影響について解説する。この記事の内容は以下のとおりである。
1.浸透圧による体液調整を解説。
2.理論の実践方法を解説。
結論として、浸透圧の観点からカリウムをナトリウムよりも多めに摂取するほうが筋肥大を促進できる。なぜなら筋形質肥大を促進するとともにペプチドホルモン受容体を活性化できるからだ。以下ではこの理由を浸透圧の作用を基に解説する。
この記事を書いている筆者は筋トレを5年間行っており、ボディビルダーを目指し研究と実践を繰り返している筋トレオタクである。またフィットネスクラブでの勤務経験があり初心者のシェイプアップに成功した経験もある。このような筆者が解説しよう。
浸透圧による体液調整
浸透圧とは
浸透圧とは、半透膜を隔てた溶液間の濃度差によって水が移動することで生じる圧力のことである。浸透圧はヒトの体液を調整している。
ナメクジに塩を与えるとしぼんでいくことを知っているだろう。あれは浸透圧が理由である。
ナメクジは体内の水分が多く皮膚はとても薄いため、ナメクジの体内と周囲の環境が半透膜で隔てられていると考えられる。ナメクジに塩を与えると浸透圧によってナメクジの体表にある水分が塩の濃度が高い外側に引っ張られる。こうして体内の水分が急激に失われナメクジはしぼんでしまう。
細胞内液と細胞外液
ヒトの体重の60%は水分で、体重の40%が細胞内液、20%が細胞外液で、細胞外液内の15%が間質液、5%が血漿である。
https://ph-lab.m3.com/categories/clinical/series/featured/articles/40より引用。
細胞内液と細胞外液を隔てている膜が細胞膜で半透膜の役割を果たす。体内の外と内の水分量は細胞膜を隔てて浸透圧で調整されている。
細胞外液にはナトリウムイオンが多く、細胞内液にはカリウムイオンが多く存在する。つまり細胞外のナトリウム濃度が高い場合、水は浸透圧により細胞内から細胞外へと移動する。逆も然り。
摂取された水分は胃を経由し小腸から血漿に移動し毛細血管の透過性によって細胞外液に移行する。
浸透圧の応用と実践
トレーニングへの応用
細胞内液を増やすことは筋力トレーニングにおいて有効である。なぜならそれがパンプを引き起こすからだ。
細胞内液が増加すると細胞が膨張する。これは細胞膜が膨張することを意味する。この現象はパンプといわれるもので筋形質肥大のトリガーとなる。筋形質肥大のための筋力トレーニングでは一時的な血流増加による細胞内液の増加、いわゆるパンプを促進させ細胞内液への水分流入を図る。
以上のことから、細胞内液が増えることは筋形質肥大を促進するため筋肥大に有効である。
筋形質肥大についてはこちらで解説しているので参照してほしい。
アナボリック環境整備
細胞内液が増加することはアナボリック環境を整備するうえで重要である。なぜなら細胞内液の増加は細胞膜の受容体を活性化させるからだ。
細胞内液が増加することで細胞膜が膨張し、細胞膜に存在する受容体が活性化する。
ホルモンは核内に受容体を持つゲノム作用を持つもの(ステロイドホルモン等)と、細胞膜に受容体を持つ非ゲノム作用を持つもの(ペプチドホルモン等)に分類できる。両者の違いは細胞膜を通過できるかどうかでこの違いによって作用発揮までの時間に差が出てくる。
細胞膜にはGH、IGF-1、インスリンといったアナボリックに関係するペプチドホルモンの受容体が存在する。ちなみに膜アンドロゲン受容体として細胞膜にもアンドロゲンと結合するものも存在する。細胞膜の膨張が受容体の分布や感受性に影響を与え、これらの受容体とホルモンとの結合が促進される。
以上のことから、細胞内液の増加がアナボリック環境の整備に貢献する。
ナトリウム対カリウムの比率
ナトリウムとカリウムの摂取比率を、1対1.1~2.5の範囲に収めることが筋肥大を促進するうえで効果的になる。なぜなら細胞内液への体液の流入を増加させるからだ。
浸透圧の関係からナトリウムよりもカリウムの濃度が高ければ、細胞外液から細胞内液へ水分が移動する。この状況は先の比率でのナトリウムとカリウム摂取で実現できる。
先の比率を実現する方法として、ナトリウム摂取量を制限するかカリウム摂取量を高めるかの二つがある。これらの方法はミネラルコルチコイド受容体へのアルドステロン結合のトリガーになり、カリウム排出とナトリウム再吸収を促進させる。
そのため多少多めにカリウムと取ったり少なめにナトリウムをとったりしても健康上問題はない。ただ過剰になると腎臓への負担をかけるのは事実である。そのため摂取比率を先のように設定した。
例えば過剰なカリウム摂取の基準として高カリウム血症がある。これは血液中のカリウム濃度が5.5mEq/L(5.5mmol/L)以上になっている状態だ。これを基準にすると例えば体重70㎏の場合、血液量は約3.5Lで血液量3.5 Lに約753 mg以上のカリウムが存在すると高カリウム血症となりアルドステロンの分泌が促進される。
以上のことから、筆者は1対1.5~2.5の範囲でナトリウムとカリウムを摂取することを推奨する。
最後に
この記事では浸透圧による体液調整の筋肥大への影響を解説した。
浸透圧の理解と実践は、筋形質肥大とペプチドホルモンの受容体活性化に効果的である。具体的にはナトリウムとカリウムの摂取比率を意識的に調整することで、浸透圧をコントロールすることができる。
この記事が読者の筋肥大に貢献したならうれしい。
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