はじめに
この記事では、抗酸化メカニズムと、グルタチオンの効果を解説する。
グルタチオンは抗酸化作用を求める上では優先度の高い栄養素である。なぜなら、抗酸化作用に含めて他の抗酸化作用を持つ栄養素を還元させるからだ。ビタミンCやEは抗酸化作用を持つが、それらは自身が酸化することで酸化物質を還元している。グルタチオンはこれらの酸化した栄養素を還元する作用を持つ。
以上のことから、グルタチオンは抗酸化物質として摂取する優先度が高い。この記事では、グルタチオンの作用と、抗酸化作用のメカニズム、摂取について解説する。
作用
グルタチオン
グルタチオンとは、グルタミン、システイン、グリシンから構成されるトリペプチドで、抗酸化作用を持つ。グルタチオンの独自性は、ビタミンCやビタミンEといった抗酸化作用を持つ栄養素を還元する点にある。これによりそれらの利用効率を高める。グルタチオンにはそれ以外にも解毒作用や抗炎症作用も期待されている。
酸化還元反応
グルタチオンを含めて、抗酸化物質が活性酸素を除去するメカニズムは、酸化還元反応に従う。酸化還元反応は、物質が電子や原子の授受を通して科学的に変化する反応である。活性酸素は酸化型の物質であり、酸化還元反応を通じて還元されることで無害化される。
活性酸素の筋トレへの影響と対策についてはこちらで解説しているので参照してほしい。
例えばビタミンCの化学名はアスコルビン酸で、還元型のアスコルビン酸(C₆H₈O₆)と、酸化型のデヒドロアスコルビン酸(化学式:C6H6O6)がある。
アスコルビン酸が活性酸素である過酸化水素(H2O2)を無害化する過程は以下の通り。

アスコルビン酸が過酸化水素を還元して無害な水に変換し、アスコルビン酸自体は酸化されたデヒドロアスコルビン酸になる。これが、ビタミンCが活性酸素を除去するメカニズムである。ビタミンCと同様に、グルタチオンも過酸化水素を還元し無害化させることができる。
この反応を見てもらうと、ビタミンCは自身を酸化させることで、活性酸素を除去することが分かる。これはビタミンEも同じである。グルタチオンやαリポ酸は、活性酸素だけでなく、これらの酸化型ビタミンを還元型ビタミンに変換させることもできる。これがビタミンCやEの効果を促進するといわれるゆえんである。以下は酸化したビタミンCがグルタチオンによって還元される反応を表した酸化還元反応式である。

以上のことから、酸化還元反応に基づいて、活性酸素は無害化され、グルタチオンは過酸化水素の無害化だけでなく酸化した抗酸化物質を還元することでも抗酸化作用を発揮する。
実践
グルタチオン摂取の注意点
グルタチオンの経口摂取はお勧めしない。なぜなら生体利用率が低いからだ。
グルタチオンを経口摂取した場合、血液で他のタンパク質と結合し分子が大きくなる。分子が大きくなると細胞内に侵入することができなくなる。
以上のことからグルタチオンの経口摂取はお勧めしない。ちなみに経皮摂取の場合先に挙げた課題が克服されるので、直接摂取しても問題ないし、生体利用率が高い。しかしグルタチオンの経皮摂取はドーピングに該当する可能性があるので、スポーツマネジメントの点で注意が必要である。
経皮摂取以外の対策としては、NAC(N-アセチルシステイン)を摂取することがあげられる。なぜならNACはグルタチオンの前駆体であるからだ。NACはグルタチオンよりも分子が小さいので、細胞内に侵入することができる。そして細胞内でグルタチオンを構成する材料として使用される。
以上のことから、経口摂取の場合はNACを推奨する。
セレンの摂取
NACを摂取したり、グルタチオンを経皮摂取する際には、それらと共にセレンを摂取すると良い。なぜならグルタチオンの作用発揮をセレンが促進するからだ。
グルタチオンが過酸化水素を無害化する際に、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)が活性化する必要があるが、この酵素はセレンを構成要素としている。つまりセレンが不足しているとグルタチオンの抗酸化作用を最大限発揮できないのだ。
以上のことから、NACの摂取及びグルタチオン経皮摂取の際には、セレンを同時摂取すると良い。それらの摂取量にもよるが、セレンを一日100~300mcgは摂取したい。
まとめ
今回は、グルタチオンの作用と摂取について解説した。
グルタチオンは、グルタミン、システイン、グリシンからなるトリペプチドで、強力な抗酸化作用を持つ。ビタミンCやEなどの抗酸化物質は、活性酸素を除去する際に自身が酸化されるが、グルタチオンはそれら酸化型ビタミンを還元し、再び抗酸化作用を発揮できる形に戻す役割を担う。また、過酸化水素などの活性酸素自体も還元して無害化できる。
グルタチオンは経口摂取しても体内にうまく吸収されにくいため、直接摂るよりも、前駆体であるNAC(N-アセチルシステイン)を摂取することで体内合成を促す方法が有効である。さらに、グルタチオンの働きを助けるグルタチオンペルオキシダーゼの活性化にはセレンが必要でなので、NACや経皮グルタチオンと併せてセレン(100〜300mcg/日)の摂取も推奨される。
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