この記事では筋肥大誘発レップ(Effective reps)について解説する。
筋肥大誘発レップを理解することは筋肥大にとって効果的であるレップを理解できるから重要だ。筋肥大の最大化には筋力トレーニングで狙った部位の筋繊維すべてに負荷をかけることが重要だが、筋肥大誘発レップの理解は多くの筋繊維に負荷をかけることに貢献する。
この記事ではそんな筋肥大誘発レップを解説し、どうトレーニングに応用するかまで解説する。
なお筋肥大誘発レップはサイズの原理の理解を前提とするモデルである。サイズの原理についてはこちらで解説しているので知らないヒトは併読をすすめる。
この記事を書いている筆者は筋トレを5年間行っており、ボディビルダーを目指し研究と実践を繰り返している筋トレオタクである。またフィットネスクラブでの勤務経験があり初心者のシェイプアップに成功した経験もある。このような筆者が筋肥大誘発レップを解説しよう。
筋肥大誘発レップとは何か
筋肥大誘発レップとは
筋肥大誘発レップは「挙上の限界前の5レップ」と定義される。そして筋肥大誘発レップに基づくと「限界前の5レップこそが筋肥大を誘発するレップ」であり、「筋肥大誘発レップ内でのトレーニングボリュームの増加が筋肥大に繋がる」と考えられる。
このモデルはサイズの原理とメカニカルテンションが筋肥大に重要であることを踏まえている。
https://sandcresearch.medium.com/how-does-training-volume-differ-between-training-to-failure-avoiding-failure-and-using-advanced-90e26d57bca9より引用。最大挙上回数(RM)と筋肥大誘発レップの関係を表した図。高重量であるほど筋肥大誘発レップに到達するまでの回数が少ない。
例えば1RMの筋肥大誘発レップは1レップ、3RMの筋肥大誘発レップは3レップとなる。15RMは理論上15回反復できるため、最後の5レップ前の10レップは筋肥大誘発レップではない。
筋肥大誘発レップでは、反復の限界の手前でセットを終了した場合も考察されており、限界-1レップで終わらすことが有効といわれる。なぜならセットのラストレップは神経系への疲労が大きいからだ。
毎セット限界まで行うセット数を増やすと過度な疲労蓄積を招き、長期的な筋肥大効率が低下する可能性が高い。限界-1レップで終了する代わりにセット数を増やすと、過度な疲労蓄積を軽減し筋肥大誘発レップを増加させることができる。
例えば限界-1レップでセットを終了し4セット行った場合と、限界まで反復し3セット行った場合では、前者の筋肥大誘発レップは16レップで後者は15レップとなる。前者の方が疲労の蓄積を軽減しつつ筋肥大誘発レップを増加できる。
https://sandcresearch.medium.com/how-does-training-volume-differ-between-training-to-failure-avoiding-failure-and-using-advanced-90e26d57bca9より引用。最大挙上回数(RM)と筋肥大誘発レップ-1レップの関係を図に表したもの。
以上のことから限界-1レップで止めることが長期的な筋肥大に有効と考えられる。このテクニックは中枢神経管理と総ボリューム増加に寄与する。詳しくはこちらの記事を参照してほしい。
限界-1レップでやめる方法は、重量オーバーロードが閾値に達して、総ボリューム増加を主に狙うプログラムを実施する際に有効だ。なぜなら本当の限界のラストレップでの神経の疲労は他のレップでの神経疲労よりも大きいからだ。総ボリュームを増加させる際に筋肥大誘発レップを1レップ逃がすことは神経疲労を少なくでき効果的だ
一方で重量オーバーロードに伸びしろがある場合は、神経疲労のことはあまり考えず各セット限界までトレーニングしたほうが良い。なぜならオーバートレーニングの原因は高強度(高重量限界まで)ではなく高ボリュームだからだ。追い込みを回避してセット数を増加させればその分ボリュームという観点から疲労を蓄する。使用重量を伸ばせるならまずは重量を伸ばすことに注力する。
筋力トレーニングへの応用
筋肥大誘発レップの考察
筋肥大誘発レップに基づくと、最後の数レップの方が最初のレップよりも筋肉にかかる負荷が大きいため筋肥大効果が高いといえる。この考えは複数の研究でも報告されており、かつサイズの原理からも理解できる。
筋肥大誘発レップだけを考えると、どんな種目でも85%1RMで取り組むことがベストとなるが、高重量はケガのリスクが高いし、カーフや腹筋、リアデルトなどの細かい筋肉はあまりにも高重量を熱うと協働して動く大きな筋肉で動作してしまう。
また限界前でないレップは、筋肥大誘発レップには劣るがり筋繊維に負荷を与えられているので、使用重量よりも限界まで行うことが重要と考えた方が良い。ただ20レップできるなら19~20回はやる。その重量を14回で終わらすのはもったいない。
筋肥大には6~12レップが効果的なので、この範囲で限界付近まで行うことが筋繊維を多く動員しつつ筋肥大を狙うには良い。
1セット目10回できる重量でストレートセットを行ったときに、同じ重量で2セット目は8回、3セット目は6回…と回数が落ちた経験はほとんどのヒトが経験する。これは1セット目で対象筋が疲労していることが理由だが、サイズの原理と筋肥大誘発レップから考えると、全セットの限界前5レップでの筋繊維の動員数は同じである。限界まで行うという条件はあるが。
レストポーズ
レストポーズ法は筋肥大誘発レップを短時間で対象筋に与える有効なテクニックだ。なぜなら助走の数レップを省略できるからだ。
レストポーズ法では1セット終わった後に重量を変えず、10~30秒ほどのレストを挟んで再びトレーニングをする。

レストポーズ法では対象筋が完全に回復していないので、2セット目のレップは1セット目よりも落ちるが、限界まで行った場合のラスト5レップは1セット目のそれと同じ負荷である。
反復回数が落ちることがミソで、少ない反復回数で筋肥大効果の高いレップ(=筋肥大誘発レップ)を獲得できる。
以上のことから、レストポーズ法は筋肥大誘発レップを短時間で稼ぐうえで有効だ。マイオレップというトレーニング法があるが目的はレストポーズ法と同じである。
ドロップセット
ドロップセットはレストポーズ法の欠点を補いながら、筋肥大誘発レップを稼ぐうえで有効だ。なぜなら使用重量を下げられるからだ。

レストポーズ法は使用重量を変えないため、複数回レストを挟むと最後のセットの反復回数が5回を切ることが多くなる。そのため筋肥大誘発レップが少なくなる欠点を持つ。
ドロップセットは毎回10~30%ほど使用重量を落とすので、毎回5回以上反復できるようになり筋肥大誘発レップを常に稼げる。たとえ使用重量を下げたとしてもすでに対象筋は疲労しているので、最初から使用重量を扱うよりも少ない回数で限界に至ることができる。
以上のことから、ドロップセットはレストポーズ法の欠点を補完しつつ筋肥大誘発レップを稼ぐ優秀はテクニックである。
レストポーズやドロップセットは短時間で筋肥大誘発レップを稼ぐ点で効果的である。しかし通常セットの助走レップとそれをこなすためのレストを省略することで時短を成し遂げているので、1セット当たりの総負荷量は通常セットよりは少ない。筆者はレストポーズ及びドロップセットn回は、通常セット-n回分と換算するのが妥当と考える。
先のデメリットを考慮しても、「時短で対象筋に負荷を与える」というメリットは十分採用価値に値するので、これらのテクニックは使えるならどんどん使うと良い。
最後に
この記事では、筋肥大誘発レップと筋トレへの応用を解説した。
筋肥大誘発レップとは「限界直前5レップ」で、このレップが多くの筋繊維に負荷をかけるため筋肥大に効果的とされる。毎回限界まで行うと神経疲労が蓄積するため、限界-1レップで止めてセット数を増やすことで、疲労を抑えつつ長期的な筋肥大を実現できる。
レストポーズやドロップセットは時短で筋肥大誘発レップを稼げるため効果的なテクニックである。
「多くの筋繊維に負荷をかける」ためには、サイズの原理と筋肥大誘発レップに加えて、「筋腱複合体」も関係する。筋腱複合体についてはこちらで解説しているので合わせて読むことをすすめる。
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