筋肥大誘発レップと筋力トレーニングへの応用。

はじめに

筋力トレーニングは身体の恒常性を一時的に破壊する行為であり、破壊された恒常性に筋肥大という形で身体は適応する。そして筋肥大を最大化するためには、筋力トレーニングで狙った部位の筋繊維すべてにメカニカルテンションをかけていくことが重要になってくる。

この記事では筋肥大誘発レップについて解説し、それをどうトレーニングに応用するかまで解説する。

筋肥大誘発レップは、サイズの原理を基に作られたモデルなので、サイズの原理について知らない場合は筆者の記事を読んでほしい。

筋肥大誘発レップ

筋肥大誘発レップとは

筋肥大誘発レップとは、メカニカルテンションが筋肥大に重要であること、メカニカルテンションは挙上の限界の数レップ前に増加する、ということを踏まえたモデル及び概念であり、「挙上の限界前の5レップ」と定義される。

そして筋肥大誘発レップに基づけば、「限界前の5レップこそが筋肥大を誘発するレップ」であり、「筋肥大誘発レップ内でのトレーニングボリュームの増加が筋肥大につながる」と考えられる。

https://sandcresearch.medium.com/how-does-training-volume-differ-between-training-to-failure-avoiding-failure-and-using-advanced-90e26d57bca9より引用。最大挙上回数(RM)と筋肥大誘発レップの関係を表した図。高重量であるほど、筋肥大誘発レップに到達するまでの回数が少ない。

例えば、1RMの場合、筋肥大誘発レップは1レップ、3RMの場合の筋肥大誘発レップは3レップとなる。15RMの場合、理論上は15回反復することができるため、最後の5レップ前の10レップは筋肥大誘発レップではないことになる。

また筋肥大誘発レップでは、反復の限界の手前でセットを終了した場合についても考察される。なぜならセットのラストレップは神経系への疲労が大きく、毎セット限界まで行うセット数を増やすと、疲労の過度な蓄積を招き、長期的に見た際の筋肥大効率が低下する可能性が高いと考えられるからだ。

反復の限界の1レップ手前で終了し、その代わりにセット数を少し増やすことで、過度な疲労の蓄積を軽減しつつ筋肥大誘発レップを増加させることができるかもしれない。例えば、限界の1レップ前で1セットを終了し4セット行った場合と、限界まで反復し3セット行った場合では、前者の筋肥大誘発レップは16レップ、後者は15レップとなる。前者の方が、疲労の蓄積を軽減しつつ筋肥大誘発レップを増加できる。

https://sandcresearch.medium.com/how-does-training-volume-differ-between-training-to-failure-avoiding-failure-and-using-advanced-90e26d57bca9より引用。最大挙上回数(RM)と筋肥大誘発レップ-1レップの関係を図に表したもの。

限界-1レップでやめる方法は、高頻度でトレーニングする場合には有効である。というのも本当の限界のラストレップでの神経の疲労は、他のレップでの神経疲労よりも大きいからである。週2回同じ部位をトレーニングするようにプログラムを管理する場合は、筋肥大誘発レップを1レップ逃がすことで神経疲労を少なくするのは効果的である。

一方で週1回しかトレーニングできない場合は、神経疲労のことはあまり考えずに各セット限界までトレーニングしたほうが良いだろう。オーバートレーニングの原因は高強度(高重量限界まで)ではなく高ボリュームである可能性が高く、追い込みを回避してセット数を増加させればその分、ボリュームという観点から疲労を蓄積してしまう。

筋力トレーニングへの応用

筋肥大誘発レップの考察

まず筋肥大誘発レップでは、最後の数レップの方が最初のレップよりも筋肉にかかるメカニカルテンションが大きいため筋肥大効果が高いとするが、この考えは複数の研究でも報告されており、かつサイズの原理からも理解することができる。限界手前のレップの方が最初の数レップよりも動員される筋繊維の数が多くなるからである。多くの筋繊維にメカニカルテンションがかかる方が筋肥大効果が高いことは明白である。

筋肥大誘発レップだけを見ると、どんな種目でも85%1RMで取り組むことがベストであると考えられる。しかし高重量は怪我のリスクが高いし、カーフや腹筋、三角筋後部などといった細かい筋肉ではあまりにも重い重量から始めると協働して動く大きな筋肉で動作しがちである。

また限界前でないレップでも、限界前のレップよりは少ないが筋繊維にメカニカルテンションを与えることはできることから、限界まで行うことが第一条件であると考えた方が良い。ただ20レップできる重量を14回で終わらすようなことはもったいない。

筋肥大の様式及びエネルギー供給系の観点から、筋肥大には6~12レップ程度の範囲が良いと考えられるので、この範囲で限界付近まで行うことが筋繊維を多く動員しつつ筋肥大を狙うには良い。

1セット目10回できる重量でストレートセットを行ったときに、同じ重量で2セット目は8回、3セット目は6回…と回数が落ちた経験はほとんどの人が経験したことがあるはずだ。これは1セット目で対象筋が疲労していることが理由であるが、サイズの原理と筋肥大誘発レップの観点から見ると、全セットの限界前5レップでの筋繊維の動員数は同じであると考えられる。限界まで行うという条件付きではあるが。

筋肥大誘発レップを得るテクニック

最も重要なことは、限界付近までトレーニングを行うことである。筋肥大誘発レップは限界前5レップで得られるからである。本当のラストレップまで行うか限界-1レップで止めるかは疲労と相談しないといけない。筆者は重さをもって使用重量を更新するセットでは限界-1レップでとどめるようにして、他のセットは限界まで行うようにしている。

レストポーズ法は筋肥大誘発レップを短時間で対象筋に与える場合有効なテクニックである。レストポーズ法では1セット終わった後に重量を変えず、10~30秒ほどのレストを挟んで再びトレーニングをする。

レストポーズ法では対象筋が完全に回復していないので当然1セット目よりも反復回数は落ちるが、限界まで行った場合1セット目と同じ筋肥大誘発レップを稼ぐことができる。反復回数が落ちることがミソで、少ない反復回数かつ少ない反復回数の割に軽い使用重量で重い重量を扱った場合と同様の筋肥大誘発レップを得ることができるのだ。このレストポーズ法と筋肥大誘発レップを合わせたトレーニング方法としてマイオレップ法がある。

ドロップセット法も有効である。特に前述したレストポーズ法と合わせるとメカニカルテンションを短時間で対象筋へことができる。

レストポーズ法は基本的に使用重量を変えないのだが、複数回レストを挟むと、最後のセットでは反復回数が5回を切ることが多くなる。そのような場合筋肥大誘発レップが少なくなるので10~30%程度使用重量を落としてみる。そうすると5回以上反復できるようになり筋肥大誘発レップを稼ぐことができる。使用重量を下げたとしても、すでに対象筋は疲労した状況から始めるので、最初から使用重量を扱うよりも少ない回数で限界に達することができる。

限界まで行うことが前提にあり、筋肥大誘発レップとサイズの原理に基づいてレストポーズ法とドロップセット法が有効であると考えられる。これらのテクニックは短時間で筋肥大誘発レップを稼ぐ際には有効であるが、通常セットが基本であろう。というのも筋肥大誘発レップではないレップでも程度は低いがメカニカルテンションを対象筋に与えることができ、筋肥大誘発レップだけと全レップとを比較した際の対象筋にかかったメカニカルテンションの総量は後者の方が大きくなるからである。

まとめ

筋肥大誘発レップは、サイズの原理に基づいたモデルで、限界前5レップと定義される。

レストポーズやドロップセットは、軽い重量かつ時短で筋肥大誘発レップを獲得する方法として効果的である。いずれにしても限界まで行うことが重要である。

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