インスリンの効果を最大化させる戦略

はじめに

この記事では、インスリンの効果を最大化させる施策を解説する。なぜなら、インスリンは「筋肉細胞のアナボリック環境整備」という効果を持ち、筋肥大に大きく貢献するからだ。

さらにインスリンをコントロールすることで、「脂肪合成の抑制」を図ることもでき、インスリンの効果を最大化させる施策を実施することは、筋肥大と健康に寄与するといえる。

この記事ではインスリンに求める効果を先に挙げた二つとして、インスリンのメカニズムに基づいてそれらを最大化する施策を解説する。

具体的施策

体脂肪率を低く管理する

インスリンの効果を高める上では、体脂肪率を低く管理することが重要だ。なぜなら脂肪細胞のインスリン抵抗性を低下させるからだ。

肥満の原因は脂肪細胞の炎症といわれている。そして脂肪細胞が多いほど炎症は増加する。炎症は脂肪細胞のインスリン受容体にダメージを与える。

https://dm-net.co.jp/calendar/2016/025350.phpより引用。

炎症によって標的細胞の反応が鈍り、インスリンの作用を効果的に発揮できなくなる状況を、「インスリン抵抗性が高い」という。肥満は脂肪細胞のインスリン抵抗性を高める要因で、これは本来筋肉細胞に結合するはずだったインスリンが脂肪細胞を標的にするという状況をつくる。

脂肪細胞のインスリン抵抗性が高くなると、インスリンが筋肉細胞よりも脂肪細胞に優先して作用するため、骨格筋内のアナボリック環境が整備されず、脂肪合成が高まっている環境を作り出してしまう。これはこの記事の目的の逆だ。

以上のことから、インスリンの効果を最大化させるためには、体脂肪率を低く管理することが重要になる。インスリンの効果を引き出す施策は多く存在するが、筆者は体脂肪率管理が最も本質的であると考えている。

男性の場合体脂肪率を10~15%で管理する

インスリンも含めて総合的に筋肥大と健康を最適化させる具体的体脂肪率は、男性の場合10~15%の範囲と考えられる。なぜなら、他の範囲と比較して、遊離テストステロン濃度を高く保ちつつ脂肪細胞のインスリン抵抗性を低下させることができるからだ。

脂肪細胞のインスリン抵抗性を高め筋肉細胞のインスリン感受性を高める上では、体脂肪率は低いほど良いが、低い体脂肪率はステロイドホルモン、特にテストステロンに影響を与える。

NHANES(National Health and Nutrition Examination Survey)を通して、2011年から2016年の期間で男性と女性の遊離テストステロン濃度と体脂肪率の関係を調査した研究では、男性では体脂肪率10%をピークに体脂肪率が増えると遊離テストステロン濃度が低下する傾向があると報告された。女性の場合は体脂肪率と遊離テストステロン濃度の有差は見られなかった。

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10763932/参照。

26から27歳のドラッグフリーボディビルダーをコンテスト前後の6か月間にわたって追跡調査した研究では、体脂肪率が14.8%から4.5%に減少し、遊離テストステロン濃度は922ng/dlから227ng/dlに低下した。

https://journals.humankinetics.com/view/journals/ijspp/8/5/article-p582.xmlより引用。

体脂肪率10%をピークに体脂肪率が1%増加するごとに11.97ng/dl遊離テストステロン濃度が低下するといわれている。

以上のことから、遊離テストステロン濃度を高く保ちつつ、脂肪細胞のインスリン抵抗性を低く保つためには、体脂肪率10~15%の範囲で体重を管理することが重要になる。

一度に摂取するグルコース量を90g以下に制限する

一度に摂取するグルコースの量を制限することは、脂肪合成を抑制するうえで重要である。なぜなら肝臓が貯蔵できるグルコース量には制限があり、余剰のグルコースは食後インスリンによって脂肪合成に使用されるからだ。

食餌で摂取したグルコースは、インスリンによって筋肉細胞と脂肪細胞に取り込まれるが、それだけでなく肝臓に貯蔵される。肝臓に取り込まれたグルコースはグリコーゲンとして貯蔵され、食後4時間の間血糖値を維持するために使用される。

肝臓は、全体の5~6%の重さのグリコーゲンを貯蔵することができ、成人の肝臓の重さを1.5㎏と仮定した場合、約100gのグリコーゲンを貯蔵できることになる。グルコース量に変換すると約90gである。

出典:Physiology of Sport and Exercise 5th edition p52

体脂肪率12%、体重65㎏の人間を対象に、体内の炭水化物と脂肪の貯蔵量を比較して得られた数値。

肝臓細胞に侵入したグルコースが肝臓の貯蔵量を超える場合、若しくはエネルギーとして利用する量を越える場合、インスリンは余剰のグルコースを脂肪酸への変換する。これらの脂肪酸はトリグリセリドに変換され脂肪細胞に運搬される。

以上のことから、食餌で一度に摂取するグルコースの量を90g以下に制限することは、脂肪合成を抑制するうえで重要である。

有酸素運動の習慣を取り入れる

有酸素運動を行うことは、インスリンの効果を最大化するうえで重要である。なぜなら、有酸素運動は骨格筋のグルコース取り込みを促進し、食後の血糖値上昇を緩やかにするからだ。

有酸素運動は筋収縮を伴い、骨格筋のGLUT4発現を促進する。これにより骨格筋のグルコース取り込みを促し、血糖値のコントロールを改善する。

脂肪燃焼を目的とした有酸素運動のやり方はこの記事で解説している。

脂肪燃焼を目的とした有酸素運動のタイミングは空腹時が良いが、インスリンの効果を高める上では、食後30分以内の15分程度の有酸素運動が推奨される。食後に有酸素運動を行うことで、摂取したグルコースを骨格筋に取り込みやすくし血糖値の上昇を防ぐ。

プレ&プロバイオティクス

https://www.meiji.co.jp/oligostyle/contents/0005/より引用。

発酵食品を摂取することと、不溶性及び水溶性食物繊維を摂取することは、インスリン感受性を高める上で効果的である。なぜならこれらの摂取が腸の炎症を抑える効果があるからだ。

プロバイオティクス(Probiotics)とは、腸内環境を改善する微生物のことである。プレバイオティクス(Prebiotics)とは、プロバイオティクスの成長を促進する難消化性食品である。主に水溶性、不溶性食物繊維に含まれる。

プロバイオティクスは腸内細菌叢を改善し、腸内で炎症を引き起こすリポ多糖などの生成を抑制する。プレバイオティクスがプロバイオティクスによって発酵されることで、短鎖脂肪酸(short-chain fatty acids:SCFA)が生成され、これが腸上皮細胞のエネルギー源として腸の修復を促進したり、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC: Histone Deacetylase)を良くしえすることで炎症サイトカインをの発言を抑制したりすることで、炎症が抑えられる。

プロバイオティクスとして食材を評価するうえで重要なのは菌数である。菌数はCFU(Colony Forming Units)で表され、これは1g若しくは1mlあたりに含まれる生きた菌の数を表す単位である。

一般的にプロバイオティクスの効果を享受するうえで、10億CFU/日の摂取が必要となる。ヨーグルトやキムチ、納豆、サプリメントなどで摂取できる。

筆者は日本に定住しているときは納豆を採用している。というのも納豆は1パック(50g)あたり500億CFUほどのプロバイオティクスが存在するといわれており、他の食材よりもプロバイオティクスが多いからだ。

プレバイオティクスとしての食物繊維の摂取量は個体差があるが一日25g程度の摂取を目安とする。食物繊維の摂取は、プレバイオティクスだけでなく、食後の血糖値上昇を緩やかにするという点でもインスリン感受性を高めることに貢献する。

ただ食物繊維に関してはとりすぎにも注意である。具体的には45g以上摂取すると下痢を引き起こす可能性がある。筆者は一時期炭水化物源を全てオートミールにした時期があるが、トイレに行くたびに下痢を催したことがある。

以上のことから、インスリン感受性を高めるために、プロバイオティクスとプレバイオティクスの摂取を推奨する。

まとめ

今回は、インスリンの効果を最大化し、筋肥大と脂肪合成の抑制を図る施策を解説した。体脂肪率を低く管理することは、脂肪細胞のインスリン抵抗性を抑え、筋肉細胞のアナボリック環境を整える上で重要で、男性は体脂肪率10~15%を維持するのが理想的だ。一度に摂取するグルコースを90g以下に制限することは、余分な脂肪合成を抑える。食後30分以内の有酸素運動は筋細胞のグルコース取り込みを促進し、血糖値を安定させる。プロバイオティクスとプレバイオティクスの摂取が腸内環境を改善し、インスリン感受性向上に寄与する。納豆やヨーグルトを摂取し、一日25g程度の食物繊維を摂取しよう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
アバター画像
しっかりヘルシー
筋トレ初心者(FFMI値22以下)のヒトを対象に、トレーニング、休養、栄養を最良化する情報を提供するサイト。筆者も初心者脱出のために勉強中。一緒に勉強しよう!