マシンとフリーウエイトの違い。

はじめに

マシンとフリーウエイトの選択について、ケガ無くオーバーロードして筋肥大が達成しているならマシンでもフリーウエイトでも良い、というのが結論である。

この二つは目的のための道具で、二極化して考えるトピックではない。

これだけではこの記事が終わってしまうので、この記事ではフリーウエイトとマシンの違いと、メリットデメリットを解説する。フリーウエイトとマシンの違いを理解して、自分の目的や環境等に合わせて種目を選択しよう。

最後にフリーウエイトにはない独自性を持ったマシンについて紹介する。

マシンのメリット(フリーウエイトのデメリット)

時短で刺激を入れることができる

フリーウエイトと比較した際のマシンの最も優れた点は、時短で刺激を入れることができる点にある。マシン利用のメリットをこの点に限定するなら、プレートローディング型のマシンよりもウエイトスタック型のマシンの方が優れている。同じ結果が得られるなら、ほとんどの人が結果までの時間が短い方を選ぶだろう。

https://www.exigo-uk.com/product/incline-chest-press/及びhttps://www.gymleco.com/product/020-lateral-incline-bench-press/を基に筆者編集。

ウエイトスタック型であればピンを差し替えるだけで重量を変化させることが可能で、プレートやダンベルを移動させる時間を省くことができる。さらにドロップセットも簡単である。プレートローディング型はその点フリーウエイトと変わらないので、時短という点ではウエイトスタック型に劣る。

負荷の方向を変えることができる。

フリーウエイトの場合重力が負荷になるので、負荷の方向を変えることができない。これはフリーウエイトを用いて立位ダンベルを水平移動させたとしても、大胸筋に負荷がのらないことを想像するとわかる。一方マシンの場合カムや滑車を利用して負荷の方向を変えることができるので、フリーウエイトでは狙いにくい部位を狙いやすくなる。

三角筋側部のストレッチを狙う際に、フリーウエイトの場合は自身の態勢を重力にあてがう必要がある。しかしマシンを使えばこのような工夫や準備なしに同等の負荷をかけることができる。負荷を変えることができるという特徴は、マシンの持つ時短というメリットとも重なる。

インクラインサイドレイズとケーブルサイドレイズの比較。ケーブルサイドレイズとインクラインサイドレイズは三角筋側部への負荷のかかり方はほぼ同じになる。

マシンのデメリット(フリーウエイトのメリット)

実際の重量と負荷に違いがある。

マシンのメリットの一つにカムや滑車を利用して負荷の方向が変わる点があるが、これは他の特徴も生み出す。それは重量と実際に筋肉にかかる負荷に違いが生まれることである。

マシンのメーカーによってカムや滑車の大きさに違いがあったり、滑車が動くかどうか、滑車の数などに違いがある。そしてこれが実際の重量と負荷に違いを発生させる。

筆者はレッグエクステンションマシンが好きで様々なレッグエクステンションを試してきた。その中でもLife Fitnessのレッグエクステンションは軌道は良いが、とにかく軽い。筆者が使用したレッグエクステンションはフルスタックが100㎏であったが、15回くらい普通にでき、絶対に100㎏ほどの負荷は対象筋にかかっていないと感じていた。一方で同じ時期にCybexのレッグエクステンションを利用した際は、70㎏くらいで15回できる程度だった。このようにマシンの特徴により重量と実際の負荷に違いが出てくるのだ。

https://progymsupply.com/p/cybex-vr2-leg-extension/及びhttps://www.lifefitness.com/ja-jp/catalog/strength-training/selectorized/hammer-strength-select-leg-extensionを基に筆者編集。

この特徴がなぜ筋肥大においてデメリットと考えられるのだろうか。それはフリーウエイトと違ってオーバーロードの管理が面倒になるからである。特に転勤や異動、出張等で様々な場所を移動する人や、複数のジムを利用する人にとっては、重量オーバーロードを移動するたびにやり直したり、おなじマシンでも複数種類管理することになるので、面倒くさいのだ。一方でフリーウエイトはこの地球上であれば10㎏は10㎏なので、オーバーロードの管理がマシンよりも複雑になりにくい。

マシンの設定が難しい。

マシンは軌道が基本的に変わらないので、マシンの軌道に自身の身体を合わせていく必要がある。このためにマシンのシートやパッド等を調整するのだが、このマシンの設定が結構難しい。というのもこの調整を間違うと対象筋への負荷が少なくなったり、負荷が筋肉へ変にかかるのでケガをする可能性も出てくる。

またマシンの軌道に自身の骨格がそもそも合わない場合もある。このような場合はマシンで刺激を与えることが難しくなる。

一方でフリーウエイトはマシンのように軌道が設定されていないので、個々人の骨格に依存することなく負荷を与えやすい。

永続的な重量オーバーロードができない。

マシンの中でも特にウエイトスタック式のマシンのデメリットであるが、自身がフルスタックの重量をコントロールできるようになってしまうと、筋肥大のための重量オーバーロードができなくなってしまう。

このデメリットはエッセンシャルトレーナーや、ボルトを使い加重することで対策はできるが、これはそもそもマシンの想定された使い方ではなく、マシンを壊す可能性があるのでジムの管理者の許可を得る必要がある。

フリーウエイトの場合加重に制限がないので、永続的な重量オーバーロードを行う点で効果的である。

独自性のあるマシン

ここまででマシンとフリーウエイトのメリットとデメリットを解説してきた。両方に良いところがあるので、特徴を理解しうえで、取捨選択すると良い。

ここではマシンの持つ特徴と筋肉の特性が合致して、フリーウエイトにはない独自性を生み出しているマシンを紹介する。

ペックフライ

https://aucfree.com/items/d200929050より引用。大胸筋の構造を考えると、セノーのペックフライのようにパッドを抱えるタイプが一番良い。

ペックフライは、マシンを利用することで、純粋な大胸筋の動きである肩関節水平屈曲に刺激を入れることができるマシンである。

ペックフライと同様の動きは、ダンベルフライで再現することができるが、ペックフライの独自性は収縮位でも負荷を乗せることができる点である。フリーウエイトのダンベルフライでは上腕骨と重力が拮抗したところで大胸筋への負荷はなくなり、それ以上閉じたとしてもダンベルを水平移動させているだけなので意味がない。

マシンペックフライではカムによって負荷の方向が変わるため、ダンベルフライでは負荷の載せられないところに負荷を乗せることができる。ペックフライ以外で同様の負荷を再現するには、チェストプレスに側臥位で座って片腕でプレスするという手段があるが、面倒くさい。

ビハインドネックブルダウン

フレデリック・ドラヴィエ | 目で見る筋力トレーニングの解剖学P62を基に筆者編集。

ビハインドネックプルダウンはラットプルダウンのバリエーションの一つで、上背部ををローイングとは異なる方向から刺激することができる点に独自性がある。

ビハインドネックは懸垂でも同様の動きをすることができるが、肩関節を過度に外旋させた状態は肩関節が安定している状態ではないのでケガをしやすい。マシンであれば体重以下の重量にも調整ができるので懸垂よりも負荷を調整してトレーニングしやすい。

またビハインドネックプルダウンはやや上体を倒して、斜めに引くと違和感なく動作しやすいのだが、これは滑車がないとできない負荷のかけ方になる。

レッグプレス

レッグプレスは上の種目とは異なる点で独自性があるマシンである。レッグプレスの特徴はハイバースクワットやローバースクワットの軌道を、シートの角度と足の位置を変えることで再現できるという特徴がある。

またレッグプレスの特徴は背もたれにもある。スクワットはバーを担ぐため負荷が頸椎に集中しやすい。またスクワットでは腰椎が曲がりやすい。一方でレッグプレスは背面全体に負荷を分散することができ、腰椎が曲がる可能性もスクワットよりも低いため、頸椎や腰椎を痛めるリスクを軽減できる。レッグプレスはその特徴から、怪我なくオーバーロードをするという筋肥大トレーニングと相性が良い。

まとめ

この記事では、マシンとフリーウエイトの違いと、メリットとデメリットを解説した。

マシンだろうがフリーウエイトだろうが怪我無くオーバーロードが達成できていたら問題ない。この目的をマシンとフリーウエイトどちらで達成できるかは、自身の環境と感覚、そしてマシンとフリーウエイトの持つ特徴を基に考えると良い。

いくつかのマシンには、フリーウエイトでは再現できない独自性を持っていることがあるので積極的に使っていきたい。

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