ローテーターカフ(回旋筋腱板)の重要性と筋トレを解説。

はじめに

ローテーターカフは回旋筋腱版とも言い、肩関節を使う運動のすべてに関与する骨格筋の総称である。この筋肉は小さいが重要な筋肉で、鍛えることで肩関節の安定性が増し、三角筋や広背筋等の肩関節に関与する筋肉の発達に貢献する。またここを温めずに高負荷をかけるとケガする可能性が高くなる。

この記事ではローテーターカフについて説明する。最初に解剖学を説明し、次にローテーターカフのトレーニングにおける役割を説明し、最後にここを鍛えるトレーニングを紹介する。

ローテーターカフの解剖学

ネッター解剖学アトラス原著第4番より筆者編集。

https://medlineplus.gov/ency/imagepages/19622.htmより引用。ローテーターカフはSubscapularis(肩甲下筋)、Teres minor(小円筋)、Supraspinatus(棘上筋)、Infraspinatus(棘下筋)から構成される。

起始停止

棘下筋は肩甲骨の棘下窩に起始し、上腕骨の大結節中央部に停止する。棘下筋は肩関節外旋と水平外転の機能を持つ。

棘上筋は肩甲骨棘上窩に起始し、上腕骨大結節上部に停止する。棘上筋は肩関節外転と外旋の機能を持つ。

小円筋は肩甲骨後面の外側縁に起始し、上腕骨大結節に停止する。小円筋は肩関節外旋の機能を持つ。

肩甲下筋は肩甲骨の前面の肩甲下窩に起始し、上腕骨の小結節に停止する。肩甲下筋は肩関節内旋と水平内転の機能を持つ。

ローテーターカフの個々の筋肉の解剖学的な用語を覚える必要はないが、ローテーターカフが肩甲骨と肩関節に起始と停止を持つ骨格筋であること、主に肩関節外旋と内旋、外転の機能を持つことは理解しておこう。

ローテーターカフの役割

肩関節安定

ローテーターカフは、肩関節を固定する役割を持つ。ゴルフのティーアップがゴルフボールを地面に落ちないように支えるように、ローテーターカフは上腕骨頭が肩甲骨から外れないように支えている。

ローテーターカフが弱ったり正常に機能しない状態で強い負荷がかかったりすると、上腕骨が肩関節から外れてしまう。これが脱臼である。

またトレーニングを通してアウターマッスルを肥大させるヒトは、インナーマッスルとアウターマッスルの筋力のバランスが低下する傾向にある。インナーマッスルに該当するローテーターカフの筋力がアウターマッスルである三角筋や広背筋等の筋力に追い付かず、両者のバランスが低下した際に、アウターマッスルが上腕骨を過度に引っ張り、上腕骨が他の骨や腱に接触して痛みが発生する。これをインピンジメント症候群という。ローテーターカフを鍛えることで、インピンジメント症候群や脱臼を防ぐことができ、三角筋や大胸筋等のさらなる発達が見込める。

ローテーターカフを鍛えることで、肩関節を使用する運動が安定する。

ローテーターカフは肩関節動作の最初に初期微動を起こすという特徴を持つ。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22391506/参照。

ローテーターカフは肩関節の運動の前に動作を始めているのだ。そのためサイドレイズやショルダープレス等の動作でローテーターカフが正常に運動しなければ動作は安定しない。

まとめると、ローテーターカフはゴルフのティーアップがゴルフボールを安定させるように、肩関節を安定させる役割があり、ローテーターカフを鍛えることで、脱臼やインピンジメント症候群といった肩関節に関連するケガの発生を防止することができ、肩関節に関与する骨格筋の肥大にも貢献する。

ローテーターカフのトレーニング

まずローテーターカフのトレーニングは最初に行おう。というのも、ローテーターカフは、アウターマッスルより先に動いて肩関節の伴う運動を安定させる役割を担うからだ。

特定の骨格筋を鍛える前に、その筋肉と連動して動く筋肉を温めておき、円滑な運動ができるようにすることをアクティベーションという。ローテーターカフを最初にトレーニングし、活性化させておくことで、それらが運動に動員されやすくなり、ケガが防止とトレーニングでの挙上重量向上に貢献する。

エクスターナルローテーション

棘下筋、棘上筋、小円筋を鍛える種目としてエクスターナルローテーションをお勧めする。肩関節外旋の動作に負荷を与える動作となる。動作中は体幹や腕の力を使わずに、肩関節外旋の動きだけで動作を行うようにしよう。

このトレーニングはゴムチューブやケーブル、ダンベルやプレートを用いて行うことができる。ダンベルやプレートの場合は、重力に身体を合わせる必要があるため、床やベンチを利用しよう。

https://bodybuilding-wizard.com/external-cable-rotation/より引用。

インターナルローテーション

肩甲下筋を鍛える種目としてインターナルローテーションをお勧めする。肩関節内旋の動作に負荷を与える動作となる。エクスターナルローテーション同様に、動作中は体幹や腕の力を使わずに、肩関節内旋の動きだけで動作を行うようにしよう。

https://bodybuilding-wizard.com/cable-internal-rotation/より引用。

ケーブルやチューブを用いる場合は立位で行うことができる。ダンベルを用いる場合はマットや床に仰向けになって行う。

エンプティカンエクササイズ

ローテーターカフの中で、棘上筋を鍛える種目としてエンプティカンエクササイズをお勧めする。動作中は反動を用いないこと、腕を挙げすぎないこと、過度に重い重量を選択しないことが大切となる。というのも、この動作は肩関節が内旋した状態で肩関節を外転させる動作であり、肩にとって不安定だからだ。

https://squatuniversity.com/2018/10/06/stabilizing-the-shoulder-blade-joint/より引用。

フォーム最優先

ローテーターカフのトレーニング全体に言えることだがトレーニングでは重量よりもフォームの方が重要になる。先に挙げたトレーニングでは過度に重い重量を扱わないことと反動を用いないことを徹底しよう。

特にエンプティカンエクササイズは上腕骨がヒトにとって不安定な位置にあるので過度に腕を挙げすぎないことを厳守して行おう。

ローテーターカフのトレーニングでフォームをおろそかにして反動や重量が大きくなったら一発で腱や筋肉を断裂する。筆者はローテーターカフも強くならないといけないと思い、重量オーバーロードをしていったが、途中でフォームを崩して棘下筋と小円筋を小断裂したことがある。

大断裂までいかなかったことは不幸中の幸いであったが、ケガを防止するトレーニングでケガをするなんて大馬鹿者である。ローテーターカフは上半身のトレーニングすべてに関係してくる筋肉群で、大断裂すると筋トレや運動に大きな悪影響を及ぼすので、ウォームアップは重要だがトレーニングではフォームを最優先しよう。

まとめ

ローテーターカフ(回旋筋腱板)は、肩甲骨と肩関節をまたぐ4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)で構成され、肩関節の安定性を保つ役割を担っている。これらの筋肉は肩関節の外旋、内旋、外転などをサポートし、肩を安定させるとで、脱臼やインピンジメント症候群を防ぐ。

ローテーターカフのトレーニングは、肩の安定性を高めるために重要である。トレーニングの初めにローテーターカフを活性化させると、ケガの予防や筋力向上に効果的である。ローテーターカフのトレーニングで最も重要なのはフォームで、過度な重量は避けるべきである。間違ったフォームで重量を増やすのは、かえってケガのリスクが高まるので避けよう。

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