この記事ではローテーターカフの解剖学と筋トレを解説する。ローテーターカフを鍛えることは重要である。なぜならそれらが肩関節の安定性を高め、肩関節に関与するアウターマッスルとのバランスを均等に保つからだ。
メインセットに入る前のローテーターカフのウォームアップが杜撰だと、アウターマッスルとのバランスが崩れ肩関節をケガする可能性が高くなる。
この記事ではローテーターカフの解剖学とトレーニング種目を解説する。
この記事を書いている筆者は筋トレを5年間行っており、ボディビルダーを目指し研究と実践を繰り返している筋トレオタクである。またフィットネスクラブでの勤務経験があり、初心者のシェイプアップに成功した経験もある。筆者は過去にローテーターカフをケガした経験がありローテーターカフのウォームアップをおろそかにする危険性とケガ対策を身をもって理解している。このような筆者がローテーターカフについて解説しよう。
ローテーターカフの解剖学
ネッター解剖学アトラス原著第4番より筆者編集。
https://medlineplus.gov/ency/imagepages/19622.htmより引用。ローテーターカフはSubscapularis(肩甲下筋)、Teres minor(小円筋)、Supraspinatus(棘上筋)、Infraspinatus(棘下筋)から構成される。
起始停止
棘下筋は肩甲骨の棘下窩に起始し、上腕骨の大結節中央部に停止する。棘下筋は肩関節外旋と水平外転の機能を持つ。
棘上筋は肩甲骨棘上窩に起始し、上腕骨大結節上部に停止する。棘上筋は肩関節外転と外旋の機能を持つ。
小円筋は肩甲骨後面の外側縁に起始し、上腕骨大結節に停止する。小円筋は肩関節外旋の機能を持つ。
肩甲下筋は肩甲骨の前面の肩甲下窩に起始し、上腕骨の小結節に停止する。肩甲下筋は肩関節内旋と水平内転の機能を持つ。
ローテーターカフの個々の筋肉の解剖学的な用語を覚える必要はないが、ローテーターカフが肩甲骨と肩関節に起始と停止を持つ骨格筋であること、主に肩関節外旋と内旋、外転の機能を持つことは理解しておこう。
ローテーターカフの役割
肩関節安定
ローテーターカフは肩関節を安定させる役割を持つ。ゴルフのティーアップがゴルフボールを地面に落ちないためにボールを支えるように、ローテーターカフは上腕骨頭が肩甲骨から外れないために上腕骨頭を支えている。

ローテーターカフ正常に機能しない状態で肩関節に強い負荷がかかると、上腕骨が肩関節から外れる。これが脱臼である。
トレーニングを通してアウターマッスルを肥大させる我々は、インナーマッスルとアウターマッスルの筋力のバランスが低下する傾向にある。
インナーマッスルに該当するローテーターカフの筋力が、アウターマッスルである三角筋や広背筋等の筋力に追い付かず両者のバランスが低下した際に、アウターマッスルが上腕骨を過度に引っ張り上腕骨が他の骨や腱に接触して痛みが発生する。これをインピンジメント症候群という
ローテーターカフを鍛えることでインピンジメント症候群や脱臼を防ぐことができ、三角筋や大胸筋等肩関節に関わる骨格筋のさらなる発達が見込める。
ウォームアップの重要性
ローテーターカフのウォームアップが重要な理由は、それらが肩関節を使用するときにアウターマッスルに先駆けて運動するからだ。
ローテーターカフは肩関節動作の最初に初期微動を起こすという特徴を持つ。
ローテーターカフは肩関節の運動の前に動作を始めているのだ。そのためサイドレイズやショルダープレス等の動作でローテーターカフが正常に運動しなければ動作は安定しない。さらにアウターマッスルの力で活性化されていないローテーターカフが引っ張られると腱や骨格筋を断裂する可能性が高くなる。
以上のことから、ローテーターカフのウォームアップは肩関節の安定とケガ防止の観点から重要といえる。
ローテーターカフのトレーニング
タイミング
まずローテーターカフのトレーニング若しくはウォームアップは最初に行おう。これはs気に挙げた役割から理解できるだろう。ローテーターカフはアウターマッスルより先に動いて肩関節の運動を安定させる役割を担わないといけない。
特定の骨格筋を鍛える前にその筋肉と連動して動く筋肉を温め、円滑な運動ができるようにすることをアクティベーションという。ローテーターカフのトレーニングはまさにアクティベーションんであり、それらを活性化させておくことで円滑な運動が可能になる。
エクスターナルローテーション
棘下筋、棘上筋、小円筋を鍛える種目としてエクスターナルローテーションをおすすめする。肩関節外旋の動作に負荷を与える動作となる。動作中は体幹や腕の力を使わずに肩関節外旋の動きだけで動作を行うようにしよう。
このトレーニングはゴムチューブやケーブル、ダンベルやプレートを用いて行うことができる。ダンベルやプレートの場合は重力に身体を合わせる必要があるため、床やベンチを利用しよう。
https://bodybuilding-wizard.com/external-cable-rotation/より引用。
インターナルローテーション
肩甲下筋を鍛える種目としてインターナルローテーションをおすすめする。肩関節内旋の動作に負荷を与える動作となる。エクスターナルローテーション同様に動作中は体幹や腕の力を使わずに、肩関節内旋の動きだけで動作を行うようにしよう。
https://bodybuilding-wizard.com/cable-internal-rotation/より引用。
ケーブルやチューブを用いる場合は立位で行える。ダンベルを用いる場合はマットや床に仰向けになって行う。
エンプティカンエクササイズ
棘上筋を鍛える種目としてエンプティカンエクササイズをおすすめする。動作中は反動を用いないこと、腕を挙げすぎないこと、過度に重い重量を選択しないことが大切となる。なぜならこの動作は肩関節が内旋した状態で肩関節を外転させる動作で、それは肩にとって不安定だからだ。
エンプティカンエクササイズは上腕骨がヒトにとって不安定な位置にあるので、過度に腕を挙げすぎないように行う。
https://squatuniversity.com/2018/10/06/stabilizing-the-shoulder-blade-joint/より引用。
フォーム最優先
ローテーターカフのトレーニングでは共通して重量よりもフォームを優先すること。なぜならローテーターカフのトレーニングでフォームをおろそかにすると一発で腱や筋肉を断裂するからだ。
筆者はかつて「ローテーターカフも強くならないといけない。」と思い、重量オーバーロードしていたが、途中でフォームを崩して棘下筋と小円筋を小断裂したことがある。その時はダンベルでエクスターナルローテーションをしており使用重量は8㎏であった。
大断裂までいかなかったことは不幸中の幸いであったが、ケガを防止するトレーニングでケガをするなんて大馬鹿者である。ローテーターカフは上半身のトレーニングすべてに関係してくる筋肉群で、大断裂すると筋トレや運動に大きな悪影響を及ぼすので、ウォームアップは重要だがトレーニングではフォームを最優先しよう。
筆者は現在上半身のトレーニングの最初には必ずローテーターカフのウォームアップを行う。その際フォーム最優先を常に意識している。おかげで先の失敗以降一度も肩をケガしたことはない。
以上のことからローテーターカフのトレーニングではフォームを最優先しよう。
最後に
この記事ではローテーターカフの解剖学と重要性、トレーニングを解説した。
ローテーターカフ(回旋筋腱板)は肩甲骨と肩関節をまたぐ4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)で構成され、肩関節の安定性を保つ役割を担っている。これらの筋肉は肩関節の外旋、内旋、外転などをサポートし、肩を安定させることで脱臼やインピンジメント症候群を防ぐ。
ローテーターカフのトレーニング及びウォームアップは肩の安定性を高めるために重要だ。上半身を鍛えるトレーニングの初めにローテーターカフを活性化させると、ケガの予防や筋力向上に効果的である。
ローテーターカフのトレーニングで最も重要なのはフォームで、過度な重量オーバーロードや反動の使用は避けないといけない。フォームを崩すことはかえってケガのリスクを高めるのでやめよう。
この記事が読者のケガ予防と筋肥大に貢献したならうれしい。
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